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大河ドラマ「どうする家康」史実をもとにライター角田晶生が振り返る 羽柴秀吉の養子になった於義丸(結城秀康)。なぜ彼が選ばれた?【どうする家康】

羽柴秀吉の養子になった於義丸(結城秀康)。なぜ彼が選ばれた?【どうする家康】

信康の計らいで父子の再会

……御兄岡崎の三郎殿、如何にもして、父上の見参に入ればやと思召し、於義丸殿三歳の御時、徳川殿岡崎に城に入らせ玉ふこと有りしに、かねて能く教へ参らせ、殿の渡らせ給ふほとりの明障子、引うごかし、父上々々と聞え給ひしに、徳川殿はやく心■させ給ひ、御座を立たせ給ふ所を、三郎殿御袖を扣へたまひ、信康が弟の候を、今日見参に入ればやと宣ふ、深く怨みいきとほり給ふ御気色見えければ、此上は見参無くては事あしかりぬと思召され、徳川殿再ひ御座につかせ玉ふ、三郎殿頓て於義丸殿の御手を引て参り玉ひ、近う渡り給へとありし程に、御膝の上にかきすゑ玉ひしかば、三郎殿歓ばせ給ふこと斜ならず……

※『藩翰譜』第一 越前

そんなこんなで、早二年の歳月が流れました。於義丸を不憫に思う一人、長兄の松平信康(まつだいら のぶやす。岡崎三郎)が二人の再会をコーディネートします。

「何じゃ三郎、たっての用事とは……」

岡崎城へと呼び出された家康。するとそこには、あの於義丸がいるではありませんか。

「げえっ、於義丸!」

「ちちうえー」

無邪気に駆け寄ってくる於義丸。恐らく信康が、あらかじめ仕込んでおいたのでしょう。

「よいか於義丸。今日はそなたの父上に会わせてやるからな」

「はい、あにうえ!」

……とか何とか。時に於義丸は3歳。まさに感動の再会ですが、家康はもう気が気じゃありません。ちょっとでも親しくしたら、築山殿に叱られるからでしょうか。

「すわっ!」

逃げ出そうとする家康の袖をつかみ、信康は諭しました。

「……母上が恐ろしいのは解ります。しかし父上。自分で生ませておきながら、生まれた我が子を愛さないのは、あまりにも人の道に反しませぬか?」

「……むむむ」

まったくその通りで、そもそも家康が侍女に余計な手出しをしなければ、こんな事にはならなかったのです。

「何がむむむですか。さぁさぁ、この世に生ませた以上は、我が弟を愛でていただきますぞ!」

という訳で、信康は於義丸を抱っこして、家康の膝に座らせます。

「わーい、ちちうえだー!」

「良かったな於義丸。ホラ、父上も於義丸にいい子いい子するのです!」

「あーわかったよ。ほーらおぎまるいいこいいこー(棒)」

「ちちうえ、だいすきー!」

何やかんやと言ったって、いざ膝に抱かせてしまえば情も移ろうと言うもの。

完全に苦虫を噛み潰した顔の家康ですが、いつかきっと於義丸を迎え入れてくれるはず……そんな幸せな未来を思い描き、弟に慈愛の眼差しを送る信康なのでした。

3ページ目 信康死後、浜松に迎えられるが……

 

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