
大河『べらぼう』二度目の「おさらばえ」…瀬川(小芝風花)と鳥山検校(市原隼人)惚れた相手のため身を引く二人の愛【前編】
「おさらばえ」……。
まさかの二度目となった、涙ながらの瀬川(小芝風花)の独白。
大河ドラマ「べらぼう」の第14回「蔦重瀬川夫婦道中」のラストで、瀬川は吉原と蔦屋重三郎(横浜流星)に、別れを告げました。
前回、「重三は、わっちにとって光でありんした。」と、身請けされ夫となった鳥山検校(市腹隼人)に、本音をぶつけた瀬川でしたが、暗闇で一人孤独を抱える人生を送ってきた検校にとっても、瀬川は自分にとっての「光」でした。
夫・検校に対し、どこか花魁のときの「客あしらい」が残る距離感ある接し方をしていた瀬川に対し、いつまでも自分には「本音や素」を見せてくれない寂しさやいらだちを抱えていた検校。瀬川の中に感じる蔦重の存在も、常に心に陰を落としていました。
かたや元花魁、かたや目は見えずとも全てを見透かすように鋭く繊細な感覚の持ち主の検校。二人のやりとりは「気遣いのプロ」同士が向き合う真剣勝負のような緊張感があり、本人同士はもちろん、観ているほうもその緊張感が伝わってきたものでした。
「誰にも譲れない大切な存在」があるというところでは、瀬川も検校も同じ。もしかしたら、この二人は、緊張の糸を緩めて心を寄り添わせることができるかもしれないという展開になった第13話「お江戸揺るがす座頭金」でした。
けれども、今回の14回「蔦重瀬川夫婦道中」では、瀬川も検校もお互いに大切にしていた存在を、自ら手放すことを決意します。
自分の想いよりも相手の「夢」を叶えるために自分自身は身を引く……あまりにも哀しく切ない展開に、「察していたものの辛すぎる」というSNSでの声も多数。
聡明で男前で粋だった、瀬川と鳥山検校の身を引く「愛」を考察してみました。
2ページ目 やっと心が近づいた夜に逮捕されてしまう検校と瀬川