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大河『べらぼう』二度目の「おさらばえ」…瀬川(小芝風花)と鳥山検校(市原隼人)惚れた相手のため身を引く二人の愛【前編】

大河『べらぼう』二度目の「おさらばえ」…瀬川(小芝風花)と鳥山検校(市原隼人)惚れた相手のため身を引く二人の愛【前編】:4ページ目

大切な相手の「夢」を叶えるため自ら身を引く

高利貸しのおかげで家は潰れ、自分は遊女になった挙句、避妊に失敗して妊娠、中絶手術をするも体を壊す……悲劇の連続だった彼女にとっては、高利貸し・鳥山検校に身請けされた瀬川が憎くてたまらないのでしょう。

自分を看病してくれる瀬川を刃で襲い傷付け、松葉屋の女将いね(水野美記)に水を浴びせかけらえ折檻されるも開き直ります。瀬川に「父上と母上は金に詰まって自害した。お前の夫のせいじゃ」と恨みをぶつけますが、瀬川も黙っていません。

「それを言うなら、自分もお武家様の決めた年貢を両親が払えずに吉原に身を売られた。けれど、憎しみを連鎖させても仕方ないじゃないか」と、声を穏やかに言います。

余談になりますが、この瀬川の言葉は、ドラマ『JIN-仁-』で、仁先生が坂本龍馬に対して言った「暴力は暴力しか生まないんです!」というセリフを思い出しました。(「べらぼう」も「仁」も、同じ脚本家・森下佳子氏です)。

この出来事から、瀬川は「巡る因果は『恨み』ではなく『恩』がいい」「自分が作る本は、『恩が恩を生んでいく』そんなめでたい話がいい」と考えるのでした。

筆者が想像したのは、瀬川にとっての蔦重、鳥山検校にとっての瀬川のように、辛い暗闇の中で生きているような日々でも、たった一人自分に「光」を与えてくれる存在がいれば、心の支えとなるというような物語。

もしくは、幼い瀬川が初めて蔦重にもらい何度も何度も読み返した『塩売文太物語』のように、いろいろな出来事を乗り越えて最後は大好きな人と一緒になるという「夢」を与えてくれる物語。

辛い時にふと扉を開いて読むと、いい思い出とともにふと心を和ませてくれる、口元に笑みが浮かぶ、そんな本が瀬川に相応しいのではと思いました。

5ページ目 「本屋ってなぁ随分と人にツキを与えられる商いだ」

 

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