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「元寇」は北海道や沖縄でも起きていた!実は”神風神話”もフィクション?近年の歴史解釈を紹介

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「伝説」も「笑い話」も信用できない

また、これは教科書に限らず一般的な知識としても知られるようになってきましたが、いわゆる元寇で「暴風雨で元軍が引き上げた」というある種の伝説も、最近はフィクションとして認識されるようになってきました。

もともと元側の記録では、撤退開始が先で、暴風雨が後だからです。

モンゴルは暴風雨で撤退を余儀なくされたのではありませんでした。日本の武士の巧みな作戦でモンゴル軍が苦戦し、撤退を決定した、というのが本当のとことだったのです。

暴風雨で退散したというホラ話の出所は、貴族です。彼らは、貴族や天皇の祈禱によって元を撃退できたのだ、と自慢していました。

また、一騎打ちで戦おうとする日本の武士に対して、元が集団戦法を用いたため日本側が苦戦したというエピソードも一昔前はよく語られていましたね。

武士は礼儀正しく名乗りをあげるのですが、モンゴル側はそれを無視して襲いかかった、という笑い話です。

今では、あれも後世の作り話だというのが通説です。一騎打ちと集団戦法の記述は、元寇の30年も後に書かれた『八幡愚童記』に見られるものであまり信用できません。

むしろ元の集団戦法に対して、日本軍は奇襲や一族郎党を率いた小集団によるゲリラ戦法で翻弄し、モンゴル得意の大軍事行動を展開させませんでした。

暴風雨による撤退や集団戦法による苦戦というのは、現在では虚構や誇張であると見なされています。むしろ、そういう伝説や笑い話が存在していたこと自体が過去の歴史になっていると言ってもいいでしょう。

このように、近年は旧来の「元寇」とは異なる実態が次々と明らかになっていますので、歴史好きの方もこのあたりの動向には注意が必要です。

参考資料:
浮世博史『古代・中世・近世・近代これまでの常識が覆る!日本史の新事実70』2022年、世界文化社

 

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