
高名な遊女・お千代の末路…江戸時代、海辺で営業していた「船饅頭」の遊女たち
俗に女性器を饅頭(まんじゅう。毛饅頭)と呼び、転じて女性そのものや遊女を指す言葉としても使われました。古くから様々に商われた饅頭は江戸の海辺でも売買されたそうです。
今回は江戸の海辺で営業していた「船饅頭(ふなまんじゅう)」を紹介。果たしてどんな饅頭だったのでしょうか。
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船饅頭の発祥は17世紀半ば
船饅頭の起源ははっきりしませんが、『洞房語園』によると万治年間(1658~1661年)と考えられています。
……いにし万治の頃か、一人のまんぢう、どらを打て、深川辺に落魄して船売女になじみ、己が名題をゆるしたり……
※庄司勝富『洞房語園(異本洞房語園)』より
【意訳】古の万治年間ごろ、落ちぶれた一人の遊女(まんぢう)が深川あたりに移り住んで船売女(ふなばいた)となり、その名題(なだい)を許したという。
……銅鑼(どら)を打つとは道楽で財産を食いつぶすこと(オジャン)。
遊女が道楽するとは考えにくいものの、ここでは落ちぶれた程度に考えられます。
「古ぼちやぼちや」のお千代
ちなみに遊女の名前は「おちよ(お千代?)」と言われ、かつては高名な遊女であったとか。
……船饅頭は食類にあらず、船中の遊女をいふ。古ぼちやぼちやのおちよといへる高名の遊女ありしとかや……
※四方山人選『通詩選諺解』より
【意訳】船饅頭とは食べ物ではなく、船で営業する遊女を言う。今では「古ぼちゃぼちゃ」になってしまったお千代という遊女が始めたそうな……。
「古ぼちゃぼちゃ」が何を意味するのかはハッキリしませんが、何となく花の盛りを過ぎてしまった中年太りの女性が思い浮かびます。
それからと言うもの、船饅頭は深川のお千代だけでなく、あちこちに現れて商売するようになりました。
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