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「どうする家康」甲斐の虎、ついに始動!そして女城主の壮絶な最期…第11回放送「信玄との密約」振り返り:5ページ目
田鶴の最期、家康の不覚悟
そして今川の世を取り戻すため、家康の前に凛然と立ちはだかる女城主・お田鶴……あの、お田鶴様、ちょっと!?
……今回の彼女は、セリフと行動が実にちぐはぐ過ぎた感が否めません。領民に対して「そなたたちの暮らしは、この田鶴が守るでな」と言いながら、全然守る気がなかったのはなぜでしょうか。
今川の世を守りたいなら、まず家康に勝たねばならず、家康に勝つためには籠城して後詰(ごづめ。攻め手の背後を詰める、つまり援軍)を待つのが定石です。
彼女が守っていた引間城は、亡き夫・飯尾連龍(演:渡部豪太)が二度にわたって今川の大軍を退けた堅城。連龍の用兵を間近で学んでいた(※)彼女なら、これを活かさぬ手はありません。
(※)もちろん傍にいても学ばない可能性はあるものの、もしそんな危機感のない女性であれば、夫亡き後に城を守ろうともしなかったでしょう。
いや、そうは言っても今川家臣団は次々と武田へ寝返ってしまい、もはや彼女は孤立無援状態だった。だから華々しく散るべくいきなり出撃したのだ……そう考えられるかも知れません。
しかし先述した掛川城の朝比奈泰能(実際には子の泰朝)はじめ氏真を支え続けた忠臣はまだいましたし、もしその気ならば連携は十分に可能であったと考えられます。
ただし実際(というより伝承・通説)の田鶴は夫を謀殺された怨みから今川を見限っており、武田の援軍が来るまで持ちこたえようと籠城したものの、家康に滅ぼされてしまいました。
話をドラマに戻すと、まだ戦闘も始まらない内から城に火をかけてしまいます。確かに炎を背負うと画面映えはするのですが、味方にとって何一つ得がありません。
かくして鉄砲がずらりと待ち受けている中へ無防備に突撃……もはや「少しでも美しくカッコよく殺してくれ」と言わんばかりです。
椿のように凛と咲き、美しく散って行く姿は実に見栄えこそしたものの、それありきな演出・展開が少し残念でした。
それよりもっと残念なのが家康の態度。兵を出せば人は死ぬ、敵が和を拒むなら殺さねば見方が殺される……そういう覚悟もないまま前線へやってきて「やめろ、撃つな」はないでしょう。
殿の発言(真意)はつまり「たとえお前らは殺されても、彼女は殺すな」と言っているに等しい。降伏勧告を拒否されて「陣を下げろ」と言った時に石川数正がふと見せた苦い表情は、そんな家康に嫌気が差したようにも見えました(気のせいですよね、きっと)。
これまでも劇中ちょくちょく「覚醒」した(っぽい素振りを見せた)家康ですが、後何回「覚醒」すれば、この家康は「我らが神の君」にお近づき下さるのでしょうか。
きっと現時点では、瀬名への言い訳で頭が一杯なのだろうな、と数正ならずとも頭を抱えてしまいますね。
次週・第12回放送は「氏真」
……ってまんまやないかい(もうちょっと捻りませんか?)!
恐らく次週は駿府から掛川城へと落ち延びた今川氏真が徹底抗戦の末、家康との一騎討を演じた末に投降する展開が予想されます。
偉大なる亡父・今川義元(演:野村萬斎)を超えられず、劣等感に苦しみ続けてきた氏真が、武士として見せる最後の意地。次回初登場となる正室・糸(演:志田未来。早川殿)との絆も見どころです。
どうする家康、どうなる氏真……次週も目が離せませんね!
※参考文献:
- 『NHK大河ドラマ・ガイド どうする家康 前編』NHK出版、2023年1月
- 『徳川実紀 第壹編』国立国会図書館デジタルコレクション
- 成島司直『改正三河後風土記 上』国立国会図書館デジタルコレクション
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