教科書からすでに「士農工商」は削除!実は身分制度・身分序列を表す言葉ではなかった【前編】:3ページ目
「四民平等」の反対の概念
では士農工商という言葉がクローズアップされたのはいつからなのかというと、明治時代です。
明治時代は、江戸時代の文化を時代遅れのものとみなし、明治以降のものを新しく良いものだとする風潮がありました。
つまり士農工商の概念は、中世的封建体制だった江戸時代は身分制度の厳しい「古い体制」で、明治時代は近代的な「新しい体制」だということを強調するために槍玉にあげられたものだったのです。
実際、明治時代は、この士農工商という言葉を批判的に挙げて「四民平等」が提唱されました。
ちなみに、士農工商と似た表現で、江戸時代以前に存在していたものがあります。室町時代に「侍農工商」という言葉が一向宗(浄土真宗)の文章に登場しているのです。
しかしこれはタテの序列というよりもヨコの職種を示すもので、やはり身分制度や身分序列を表すものではありませんでした。
ここまでの説明から、なぜ士農工商という言葉が現代の教科書から消えたのかが理解できますね。
つまり、士農工商という言葉は、歴史的に見てもタテの「階級」を示すものとしては考えられず、単なる職業の区別を示すものとして捉えるのがせいぜいだということです。江戸時代の身分制度も、士農工商の分類とはほぼ無関係でした。
【後編】では、かつての身分序列の実態についてさらに詳しく掘り下げます。
【後編】の記事はこちら↓
教科書からすでに「士農工商」は削除!実は身分制度・身分序列を表す言葉ではなかった【後編】
「士農工商」=「すべての人々」【前編】では、士農工商という言葉が歴史的に見てもタテの「階級」を示すものではなく、単なる職業の区別を示すものだという考え方を説明しました。[insert_po…
参考資料:
浮世博史『古代・中世・近世・近代これまでの常識が覆る!日本史の新事実70』2022年、世界文化社