口は禍の元!日本神話の英雄ヤマトタケルが悲劇を招いた失言ワースト3:4ページ目
失言その3:ラスボスに向かって「雑魚に用はねぇ」天罰てきめん
東国を平定した後、西へ戻って来る途中のヤマトタケルが、伊吹山に棲む荒ぶる神を倒しに向かうと、一頭の白い大猪(※『日本書紀』では大蛇)が出現しました。
それが本当は荒ぶる神そのものだったのですが、ヤマトタケルはこれを「神の使いであろう」と判断し、「雑魚に用はねぇ」と完全スルー。
古来、言葉は「言霊(ことたま、ことだま)」と言われるように呪力を持ち、発した言葉は自分にも相手にも大きな影響を及ぼすものです。
これを言挙げ(ことあげ)と言い、要するに「現代以上に言葉の重みが大きく、軽々に発しては(こと侮るなどしては)ならない」ということですが、「雑魚」呼ばわりされた挙句、スルーされてしまっては神様もメンツ丸つぶれ。
「このガキ……絶対に祟り殺す!」
荒ぶる神は雲を起こして大氷雨を降らせ、自分の手が見えぬほどの霧を立ち込めて散々に惑わした結果、ヤマトタケルはたちまち遭難。這々の体で逃げ帰ったヤマトタケルは、力尽きて命を落としてしまったのでした。
終わりに
以上、ヤマトタケルの悲劇を招いた失言ワースト3を紹介して来ましたが、もしかしたら、本人は至って無邪気だったのかも知れません。
そんな豪快さが彼の英雄的な魅力を引き出している一方で、それさえ言わなければ父に疎まれず、オトタチバナヒメを失わず、そして祟り殺されずに済んだのに……と思うと、やはり惜しまれますね。
※参考文献:
福永武彦『現代語訳 古事記』河出文庫、2003年8月
福永武彦『現代語訳 日本書紀』河出文庫、2005年10月
吉野裕子『山の神 易・五行と日本の原始蛇信仰』講談社学術文庫、2008年8月