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「鎌倉殿の13人」北条ファミリー最後の団らん…第37回放送「オンベレブンビンバ」振り返り

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北条ファミリー・最後の団らん

さて、いよいよ実朝の排斥計画を実行に移そうとする時政でしたが、最後にりくへ語り掛けます。「わしの望みはもうない。お前が何よりの宝だから」

もう自分の器量を超えた欲望に振り回されるのは正直しんどい。愛妻や家族みんなで仲良く幸せに暮らすことこそが、時政の望みでした。

でも、りくは強欲で、しかもいい女なのです。「もっと喜ばせて下さいませ」多くの作品ではこれに魅了された時政は、ノリノリで謀叛を企むのがお約束。しかし本作の時政に、家族を殺すなんてやっぱりできません。

子供たちをとるか、愛妻をとるか。普通に考えれば欲望を煽り立てて家族の和を乱す妻一人を追い出せば解決するのですが、彼女は自分に人生の望みを賭けて嫁いできたのです。

自分を頼って来た者の気持ちをむげにはできねぇ。たとえそれが、どれほどの悪人悪女であろうとも。

と言って子供たちを殺すことなどできず(そもそも謀叛が成功する見込もない)、時政が選んだ道は「あえて謀叛を起こし、りくと一緒に相応の報いを受ける」。ついに時政は、孫(実朝)に向かって抜刀までしてしまったのでした。

少し時をさかのぼって「夜(謀叛の決行)までに一つ、やっておきたいこと」があるとして、みんなで開いた北条ファミリー最後のホームパーティ。

政子が伊豆を懐かしんで植えてみた茄子について「これじゃダメだ」と義時・時房を従え手直しを始めます。

茄子はこぶし2つ分の間隔をあける……間引きするのかと思えば一株々々丁寧に植え直しており、やっぱり家族を「間引く」なんて出来ない時政なのでした。

ところで、家族みんなの幸せを願って唱えたオンベレブンビンバ……じゃなかったオンタラクソワカ。あれは確か、かつて北条政範が生まれて間もない頃に大姫が披露したんでしたっけ。

あの時はみんな一緒で、みんな笑顔で……時政にとって最も幸せだった時代を懐かしんで唱えたのかも知れません。

第38回放送「時を継ぐ者」

ちなみにオンタラクソワカとは虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)の真言。真言とはざっくり言うと「人間の言葉では表し切れない、仏様ご自身の真髄を表す言葉」だそうです。虚空蔵菩薩は宇宙の真理を司り、知恵や知識、記憶についてご利益があると言います。

補足として、劇中のフレーズは「オン・バザラアラタンノウ・オンタラク・ソワカ(Oṃ vajraratna, Oṃ trāḥ svāhā)」が略されたもののようです。

政範の時は唱えなかったから非業の死を遂げてしまいましたが、今回ばかりは心から子供たちの幸せを願って唱えたからか、うろ覚えであっても子供(政子・義時・実衣・時房)たちは生涯をまっとうできたのでした。

さて、次回はいよいよ時政&りくの追放。劇中「時政を討つ」と息巻いている義時と、実朝に白刃を突きつけてしまった時政。普通に考えれば、時政を粛清するよりありませんが、果たしてこれをどう穏便(殺さず)に済ますのでしょうか。

第38回放送のサブタイトルは「時を継ぐ者」。時代は時政から義時・時房へ、「時」が受け継がれていく名場面がどう描かれるのか、次週も楽しみですね!

※参考文献:

  • 岡田清一『鎌倉殿と執権北条130年史』角川ソフィア文庫、2021年10月
  • 本郷和人『北条氏の時代』文藝春秋、2021年11月
 

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