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柿はときどき化けて出た!?俳句、保存食、そして妖怪まで…日本人と「柿」の深いつながり

柿はときどき化けて出た!?俳句、保存食、そして妖怪まで…日本人と「柿」の深いつながり

柿はときどき化けて出た

そんな柿ですが、他のフルーツと比べるとどこか地味な感じがします。例えばスイーツやデザートと言われて、柿を真っ先に思い浮かべる人は少数派でしょう。

しかし柿がどれほど日本人にとってなじみ深い果物だったのかを示す証左として、「柿はときどき化けて出た」ことが挙げられると思います。季節のフルーツの中で、お化けになって人前に現れたという伝承が多く残っているのは柿くらいなものでしょう。

有名なのは、柳田國男の『妖怪談義』に登場したタンタンコロリン。水木しげるもタンコロリンという名前で絵を描いており、これは柿の実を放置しておくと化けて出る妖怪です。

宮城県では柿のお化けの伝承が多く、化けて出た大男が、柿の実を収穫してほしくてポトポト落としながら歩いて柿の木の下で消えたとか、真っ赤な顔の男がお尻の肉をえぐって食べろと言うのでそうしたら甘い柿の味がした、などという話があるようです。

尾籠な話ですが、柿のお化けが差し出してくるのは「お尻」だったり「柿の味がする糞便」だったりと、なぜか下ネタになりがちなようです。理由はよく分かりませんが、もしかすると柿渋は銀杏に似た匂いだというので、そこでつながってるのではないかな、と私は勝手にイメージしています。

ともあれ日本人にとって、柿はとても身近で、まるで今にも「果実をほったらかしにしてないで早く食べてくれ」と訴えてきそうな存在だったんですね。季節のフルーツは数あれど、こんな風に昔から「擬人化」されていたものは他にないのではないでしょうか。

参考資料
柳田國男『妖怪談義』(ちくま文庫『柳田國男全集6』より)

 

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