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神が消えてしまうなんだか不吉な10月の旧称「神無月」。でも安心、留守番役にはあの人が!:2ページ目
「神様不在」の土地を守る、意外なアノ人
さて一方で、出張会議のため神様がいなくなってしまったそれぞれの地域は、どうなっているのでしょう?
神様がいなくなったんだから、きっと悪いことが起こるに違いない……と誰しもが考えることでしょう。まさにその通りで、神無月は病気や怪我などの禍が降りかかりやすいと言われています。また地震を起こす土中のナマズを押さえつける神もいなくなるので、天災にも注意が必要です。
これは、神域でもある神社とて例外ではありません。
普段、神社では鳥居やしめ縄によって結解が張られ、神の力で守られています。しかし神無月はさすがに無防備となってしまい、悪霊が忍び込むことがあるのです。
また、神無月に神社に参拝してもご利益がないと言われています。
しかしそれでめげないのが日本人。神様がぜんぶいなくなってしまうのはあんまりだということで、「留守番」役の存在を設定することにしたのです。
それが恵比寿(えびす)様です。七福神の一人で、釣り竿と鯛を手にしているあの神様です。
そもそもなぜ十月に神様が出張会議をするのか、そしてその留守番役が恵比寿様なのか、いずれも根本的な理由は諸説ありはっきりしたことは不明です。ともあれ、神様がいなくなる神無月でも、神様が全ていなくなったわけではない。留守を預かってくれる恵比寿様がいる……ということで、人々は安心を得たのです。
こうした理由から、十月二十日には恵比寿様を祀る「えびす講」が行われるようになりました。
この日には、それぞれの家で恵比寿神の像を祭り、一升枡に金銭を入れて、尾頭付きの鯛と一緒に備えたりします。
それにしても、出雲大社に集う神様たちはまっすぐ目的地に向かうわけではなく、途中で神社に立ち寄ったりしながら一カ月間ゆっくり巡ってくるわけで、いわばこれは旅行です。恵比寿様だけが留守番というのもなんだか可哀想ですね。今の時代だったら、神様たちもリモート会議をしてくれればいいのに……とも思います。
もっとも、恵比寿様は大漁や五穀豊穣の神様でもあります。収穫の季節である十月は、旅行に出かけて休む暇もないのかも知れません。
参考資料
火田博文『本当は怖い日本のしきたり』(彩図社・2019年)
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