河童とともに日本を代表する妖怪、天狗。そのイメージの変遷を見てみましょう。:2ページ目
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隠し神としての天狗
江戸時代になると、天狗の存在を信じて疑わなかった平田篤胤などに研究されるようになり、特に「神隠し」との関連で語られることが多くなります。現代なら誘拐、家出、遭難などと推測される失踪事件が天狗の仕業とされ「天狗隠し」と呼ばれました。
「天狗隠し」らしき事件は平安時代ごろから文献上に現れ、なんと昭和の初期まで信じられていました。他にも古くから「天狗倒し」「天狗つぶて」といった言葉があり、説明不可能な気味の悪い出来事を正体不明な天狗のせいにすることがよくありました。
失われた異界
天狗や鬼などの隠し神を信じることは、人々が人間の住む世界の外側にある「異界」すなわち神の領域の存在を信じていたことを示しています。というのも、神隠しに遭遇して生還した者たちがみな、体験談の中で「異界」の様子に触れているからです。それは極楽浄土であったり竜宮城であったりします。
天狗隠しの場合の「異界」とはその棲みかである山です。深山幽谷にひそんで自由に空を駆け、様々な験術で人間を驚かす大天狗は、そのいでたちからして役小角を開祖とする修験道および山岳修行者(山伏)との関連も無視できません。
山野を離れ都会に暮らすようになり神観念や山への畏怖の念を失った現代人は、失踪事件の原因を人間世界の中に求めるようになりました。
もはや天狗が介在する余地はなくなってしまったのです。
この情報は助かる!吸血鬼はニンニクだけど、天狗は青魚で撃退できるというライフハック
西洋のモンスター、吸血鬼は人の生き血をすする恐ろしい存在で、人々は身を守るために十字架を持ったり銀のナイフで撃退したり、また吸血鬼が苦手だというにんにくを食べたり……と退治のためにいろいろ準備しますよ…
〈おもな参考文献〉
「天狗と修験者 山岳信仰とその周辺」宮本袈裟雄/人文書院
「神隠し 異界からのいざない」小松和彦/弘文堂
「天狗考」知切光歳/涛書房
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