「極楽は 敵を倒した その先に」徳川家康が詠んだ味わい深い和歌5選を紹介:2ページ目
眼をわずらい、秋葉大権現に願かけ
明らかに 東を照す 御ひかり
ちかひをわれに 譲り給へや※慶長二年正月、眼病を患った折、遠州秋葉東照山平福寺に御願書を奉る
【意訳】東国を明るく照らす秋葉大権現さま、どうかその御威光と使命を私にお譲り頂けないでしょうか。
……時は慶長2年(1597年)正月、家康は眼病を患ったそうで、その平癒祈願に秋葉大権現をお詣りしました。その時の歌だそうです。
東を照らすという言葉が死後に贈られた東照大権現に通じるものを感じます。この時に譲られた「ちかひ」を生前から意識していたのかも知れませんね。
まるで藤原道長?満月を我が手に
天か下 心にかゝる 雲もなく
月を手にとる 十五夜のそら※三河国碧海郡野畑村里民の高橋武右衛門が、先祖から聞いたという歌
【意訳】天下を我がものとし、心には何一つ憂いもない。望めばあの満月さえ手にとれるような心地だ。
……何だか藤原道長の「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」にそっくりですね。
実は黒歴史だった?「此の世をば……」藤原道長のこの歌を一体誰が後世に伝えてしまったのか?
「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」(大意:この世界は、あの満月のように『完全無欠な私』のものだと思っている)この有名な歌、聞いたことありますか?ご存知、藤原道…
天下人となった家康の有頂天ぶりが目に浮かびます。これを農民が言い伝えているというのは、もしかしたらオフレコだったのかも知れません。
公の場ではこんなこと言えないけど、遊びに出た先でなら……そんな気のゆるみが出ているのでしょうか。
まったく役人ってヤツは……
松の木は ものゝ奉行に さも似たり
曲らぬやうて 曲り社(こそ)すれ※在京時、北野の松原に渡御した折に詠んだ歌
【意訳】松の木は、役人に似ておるな。どれほどまっすぐにしようと努めても、気づけば曲がってしまうようだ。
……曲がらぬ松がないように、不正をしない役人はいない……そんな家康のぼやきが聞こえるようです。
まぁ、あまり真っすぐ過ぎても周囲と衝突が絶えなさそうですし、ある程度は周囲に合わせて曲りながら協調していく姿勢を許してあげて下さい。