なんと日本海軍はブドウから兵器を作っていた!?戦時中のワイン造りとロッシェル塩【後編】
戦後のロッシェル塩の活用
【前編】では、日本海軍が兵器製造のためにロッシェル塩を必要としたことから、特別に物資の統制が緩和され、ブドウ作りが奨励されていった流れを解説しました。
なんと日本海軍はブドウから兵器を作っていた!?戦時中のワイン造りとロッシェル塩【前編】
しかし、昭和20年(1945年)に終戦を迎えると、酒石酸類は、少なくとも軍需物資としての需要がなくなりました。
そこで同年10月に大蔵省は酒石酸の増産策を放棄します。戦時中のワイン造りは兵器の製造に直接関わる重要な役割を果たしていましたが、戦後はその役割を失ったわけです。
しかし、ロッシェル塩はその後も科学や工業の分野で利用され続けました。
例えば、有機合成の中間体や触媒として医薬品や染料などの製造で役立てられていますし、工業分野でも引き続き利用されていきます。
また、ロッシェル塩は、銀の酸化物と反応させると銀の鏡と呼ばれる銀の薄膜を作る性質があります。この反応は銀の鏡反応と呼ばれ、写真の現像や鏡の製造に用いられました。
さらに食品添加物としても使われています。ロッシェル塩には食品の色や味を安定させる働きがあるため、ゼリーやジャムなどに活用されました。
その一方、ロッシェル塩には過剰摂取すると腎臓や心臓に負担をかけるという難点があります。また、金属と反応して水素を発生させることがあり、火災や爆発の原因になることもありました。
他にも、水に溶けやすいため水質汚染の問題も発生します。ロッシェル塩は、水中で酒石酸に分解されると水の硬度を上げることがあり、そうなると水道管や洗濯機などの劣化の原因にもなるのです。