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大河ドラマ「どうする家康」史実をもとにライター角田晶生が振り返る 「どうする家康」名門今川家、ついに滅亡!最後に残されたのは…第12回放送「氏真」振り返り

「どうする家康」名門今川家、ついに滅亡!最後に残されたのは…第12回放送「氏真」振り返り:3ページ目

糸(早川殿)は足が悪かった?彼女を迎えた婚礼の様子は

「あのおみ足は幼き頃、石段から落ちられたのだとか」

「なかなか貰い手がなかったようじゃな。若君様も、お気の毒なことよ……」

足が不自由で歩行がままならず、氏真に「足手まとい」と毒づかれていた糸。この設定は大河ドラマの創作でしょう(単に筆者が物知らずで他に史料文献などございましたら、ご教示願います)。

これは以前、家康側室のお葉(演:北香那。西郡局)がレズビアンであったオリジナル設定と同様に、昨今の差別・人権問題について示唆する意図があったのでしょうか。

ストーリー上影響ないため、別に彼女の足がよかろうと悪かろうと視聴者としては構いません。何ならいっそもっと分かりやすく義足あるいは片足がない(着物に隠して杖をつかせる)描写でもよかったかも知れません。

しかしせっかくそういう設定を入れるのであれば、もう少し氏真との関係(今まで労りもしなかった氏真が反省する等)を丁寧に描いて欲しかったところです。

ちなみに『勝山記』では氏真と糸の結婚について、実に晴れがましく記録していました。

……駿河の屋形様へ相州屋形様の御息女を迎い御申し候、御供の人数の煌めき、色々の持ち道具、我々の器用ほど成され候、去るほどに見物、先代未聞に御座有る間敷く候、承け取り渡しは三島にて御座候、日の照り申し候事は言説に及ばず、余りの不思議さに書き付け申し候……

【意訳】氏真(駿河の屋形様)が北条氏康(相州屋形様)のご息女をお迎えした。その素晴らしさはお供の者たちや嫁入り道具まで煌めくようで、街道に見物客があふれ返る様子は前代未聞である。

ご息女のお引渡しは両家国境の三島で行われ、その瞬間に今まで曇っていた空が一気に晴れ渡り、太陽が照りつけたのは奇跡としか言いようがなかった。

今川家中にとって、糸の嫁入りがどれほど喜ばしいことであったか、きっと氏真だって満更じゃなかったはずです。

落ちぶれた後もずっと寄り添い続け、慶長18年(1613年)に先立つまで添い遂げた戦国きってのおしどり夫婦。そんな二人の愛情が、今回芽生えたものと信じます。

なお彼女は1女4男(吉良義定室、今川範以、品川高久、西尾安信、澄存)を生み、名門の誇りと血脈を後世へつなぐ役割を果たしたのでした。

4ページ目 その他、野暮なこと諸々

 

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