「鎌倉殿の13人」泉親衡とは何者か?北条義時・和田義盛の開戦前夜…第40回放送「罠と罠」予習【上】:3ページ目
志を果たすまでは……薗田七郎かく語りき
さて、そんな中、捕らえていた薗田七郎成朝が脱走しました。
囚人之中。薗田七郎成朝遁出預人之家逐電。今夜先向于祈祷師僧〔号敬音〕。坊。談日來子細。坊主勸云。今度叛逆衆。皆不可破四張之網。只今一旦雖遁出。始終定難成安堵之思歟。須遂出家者。成朝答云。与力事者勿論。但依時儀令逃亡者。上古有名譽之將師等所爲也。而無左右遂素懷者。頗似無所存。就中年來有受領所望之志。不達其前途者。不可及除髪云々。僧甚笑之。無再言云々。其後聊盃酒。臨半夜退出。不知行方云々。
※『吾妻鏡』建暦3年(1213年)2月18日条
「冗談じゃねぇ、このまま終わってたまるかよ!」
追手を掻いくぐった七郎は、日ごろ懇意にしていた僧侶・敬音(けいおん)の元へ逃げ込みます。
「それは大変でしたな」
七郎をねぎらいながら、しかし敬音は諭しました。
「このまま逃げても逃げ切れるものではないし、よしんば逃げおおせたとしても常に追手を恐れて暮らさねばならぬ。ここは堂々と弁明するか、あるいは潔く出家された方が御身のためとは存ずるが……」
しかし、七郎はこれを撥ねつけて言い放ちます。
「断る。此度の謀叛は紛れもない事実。とは言え事破れた者がいっとき身を退くのは恥ではない。かねて国司になりたいとの志を持っており、出家してしまったらそれも叶わぬ。きっとそれを叶えるまで、それがしは死ぬことも出家もせんのじゃ!」
これはまた大層な心意気。野心のために謀叛に加担して何が悪い!とばかりの開き直りが心地よく、敬音は笑って七郎を見送りました。
成朝逐電之間。縡露顯。被召出件僧。被尋問之處。成朝申状之趣。悉以言上。將軍家聞食之。受領所望之志事。還有御感。早尋出之。可有恩赦之由云々。
※『吾妻鏡』建暦3年(1213年)2月20日条
そんなことがあって2日後、七郎の脱走が発覚しました。2日間も気づかないって、一体どんな監視体制だったのでしょうね。
「彼奴めはかくかくしかじかと申しておりました……」
敬音からの報告を受けて、実朝は感激。
「気に入った!その心意気に免じて罪を赦し、国司の願いを叶えてやろう。ただちに探し出すのだ!」
え、いいんですか?……義盛の願いは叶えられなかったのに……周囲の御家人たちも困惑したことでしょうが、その後、七郎が姿を見せることはありませんでした。