ほったらかしの満州事変!?軍部の暴走を招いた日本人の不運な選択:3ページ目
関東軍、政治家、国民のそれぞれの思惑のずれ
こうして見ていくと、よく言われる「昭和初期は軍部が独走して、クーデターとテロを繰り返したことで軍国主義になっていった」という見方はあまりにも単純すぎることが分かります。
詳細は割愛しますが、実際には関東軍は満州「国」を作りたくなかったとか、五・一五の時は軍人をかばった国民もその後は政党政治の復活を望んでいたとか、当時の政府も景気回復と満州事変の処理に相当がんばっていたとか、複雑な思惑とすれ違いが錯綜していたのです。
それにしても、現代と大差ないところもありますね。
大局的な国益よりも「景気対策」を前面に出す各政党と、それを支持する国民。それでもやっぱり与野党は政党・派閥のエゴを捨て切れず党利党略に走り、野党は野党で、与党がああするならこっちはこうだ、と張り合ったり逆張りすることばかり考えている――。
多くの日本人が遠い昔のことだと思っている「戦前」も、こうして見ると変なところで今とそっくりだったりするのです。
歴史の結果は唯一絶対のもので、歴史に「イフ」「たられば」はない、とよく言われます。しかし一方で「歴史は繰り返す」などとも言い、実際に歴史を調べているとどっちも真理のように思えることがあるから不思議ですね。
参考資料
井上寿一『教養としての「昭和史」集中講義』SB新書、2016年
八幡和郎『歴代総理の通信簿』PHP新書、2010年
サプライズBOOK『総理大臣全62人の評価と功績』株式会社アントレックス、2020年
宇治敏彦編『首相列伝』東京書籍、2001年