EV車(電気自動車)は70年前からあったんです!~戦後の「遺産」としての自動車開発小史~:3ページ目
軽自動車も経済成長期の「遺産」
70年以上も前に電気自動車がすでに一般に出回っていたことも驚きですが、もうひとつ、かるく驚かされるのは「軽自動車」の歴史です。
車を運転している人なら、軽自動車のことは分かりますね。排気量660㏄以下の小型の車です。普通乗用車に比べるとパワーはありませんが、価格や維持費用がかさまないこともあって今も人気です。
実はこの軽自動車という種類は、高度経済成長期に貨物自動車の需要が増す中で、中小企業や個人事業主、個人商店も安価に車を入手できるように……という意図で開発されたのです。
もともと「軽自動車」という言葉自体は戦後まもなくから存在していましたが、当初は2輪車や3輪車も含まれていました。昭和20年代は、現在では名前も聞いたことがないような会社から3輪トラックなどが相次いで発売されています。
4輪貨物車の生産が軌道に乗ってきたのは昭和30年代からで、前半期には鈴木自動車工業、ダイハツ工業、富士重工業、東洋工業(現:マツダ)、新三菱重工業といった名だたるメーカーが本格的に軽3輪、軽4輪車の生産をスタートさせています。
最初は「個人が乗用車を持つ」というのはちょっと考えられない話でした。しかし1958(昭和33)年5月に発売された「スバル360」の高い完成度と42万5千円という破格の値段は、個人が車を所有する時代の到来を告げるものでした。
そしてその後、経済成長によって個人所得が増加し、軽自動車の需要は本格化していきます。1955(昭和30)年以降の日本の自動車保有台数は毎年10数%から20%と伸び続け、1964(昭和39)年以降は毎年100万台以上も増えていきます。そして昭和40年は698万台、3年後の昭和43年3月には1,169万台と、ついに1,000万台を突破しています。
「一人一台」の乗用車の所有が当たり前になった今の時代から見ても、この数字の伸びは脅威的です。高度経済成長期というのがいかにすさまじい時代だったかが分かりますね。
電気自動車に軽自動車……。今では特に珍しくもないこうした車たちにも歴史があり、我々はその開発に心血を注いだ人々の「遺産」で生きているのだということを、改めて考えさせられます。
参考資料