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米津玄師「死神」の元ネタになっている落語の「死神」ってどんな話し?

米津玄師「死神」の元ネタになっている落語の「死神」ってどんな話し?:3ページ目

蝋燭の火が……

「馬鹿野郎」

すっかり夜も更けた帰り道、男の背中に恨み言をかけたのは死神でした。そりゃそうですよね。

「てめぇ、死神業界のタブーを犯しやがって!お陰で俺は減俸になっちまった。どうしてくれンだよ」

「あぁ、ごめんごめん。お陰サンでこっちは一万両入ったからサ、今度おごってやるよ」

「人間世界のカネなんざ、俺たちには意味がねぇンだよ……まぁいいさ。お前も今回の件で、相応の『代償』を支払ったンだからな」

「え?」

死神の言葉にふと恐ろしくなった男は、気がつくと真っ暗闇の中にたくさんの蝋燭が灯っている空間に来ていました。

「これは……?」

蝋燭は長いのも短いのも、また勢いよく燃えているのも消えそうなのもあり、死神はこれを「人間の寿命」だと言います。

「お前の寿命は……ホラ、これだ」

死神が指さす先には、今にも消えそうな蝋燭が、ジリジリと音を立ててか細い火を立てていました。

「おい、これ消えたらどうなるンだ?」

「消えたら死ぬよ」

「……そんなバカな!俺はまだこんなに元気だぜ?」

「元気だって何だって、死ぬヤツは死ぬ。むしろ、いかにも死にそうな病人よりも、今まで元気だったヤツがバッタリ死ぬ方が、見ていて面白ぇと思わねぇか……?」

「この野郎、悪趣味だな!」

「まぁ、死神だからな」

「……でも、どうしてこんな事に!?」

「お前ェがあの病人の布団をひっくり返ぇした時、お前はヤツと命のとっけぇ(取換)っこをしちまったのサ」

「ってぇ事は?」

「お前ェの本当の寿命はナ、ほらコレだ」

死神が指さす蝋燭は、確かにまだ半分弱ほどあって、元気よく燃えています。しかし、それはもうあの病人のもの、今さら悔やんでも始まりません。

「目先のカネに目がくらんで、命を売ったバカな男がポックリ死ぬ……まぁ、減俸の気晴らしにさせてもらうぜ」

「そんな……前世の因縁がどうとか言ってたじゃねぇか。そのよしみで何とかならねぇのか!」

哀願する男に、死神は蝋燭を一本渡します。

「仕方ねぇ。コレに火を移すことが出来れば助かるが、さっさとしねぇと火が消えるよ」

「ありがてぇ!」

しかし、蝋燭の火を移すなんて簡単だと思うでしょうが、なにぶん命がかかっており、緊張して手が震えると、意外と上手くいかないものです。

「ホラ、ふれぇ(震え)てると、け(消)ぇるよ……」

「やめてくれよ!お前ェがそうやって声をかけるから、手が震えちまうんだ!」

「ホラ、消ぇるよ……消ぇるよ……」

「あ、消え」

とうとう蝋燭の火が燃え尽きて、男は死んでしまったそうな。

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