屈強・頑強・質実剛健!鎌倉武士の強さの秘密は栄養食にあった?:2ページ目
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極めつけの梅干しパワーで一騎当千
さらに、鎌倉時代の『世俗立要集』によれば、鎌倉武士の膳には「梅干し」が用いられていたそうです。
これも注目に値します。梅干しの酸味には、疲労物質である乳酸を分解し、排除する作用があります。また殺菌作用や血液浄化の働きもあるので、自然治癒力や病気に対する抵抗力がアップするのです。
少しでも健康食のことを調べたことがある人なら、この鎌倉武士の「玄米飯、一汁一菜、梅干し」という献立の完璧さにはため息をつくのではないでしょうか。
ちなみに、『平家物語』にこんなエピソードがあります。鎌倉幕府が開かれるよりも前の1183(寿永2)年、平氏一族を放逐して京の町に入った木曽義仲の陣所に、朝廷の使者がやってきました。
この使者は、公家の猫間中納言光隆。ちょうど食事時だったので、義仲は、光隆に料理を出すように命じます。
この時のメニューというのが、山盛りのご飯に三種類のおかず、ヒラタケの汁というものでした。ところが、光隆は食器の汚さに辟易して、我慢して食べるふりだけをしてさっさと帰ってしまったのです。
このあたりから既に、武士と公家の「食」に対する考え方や感性の違いははっきりしていたのでしょう。
歴史的に見れば、これが、貴族化した平家一門と鎌倉武士たちの大きな違いでした。平家が白米中心の贅沢な献立を主としていたのに対し、鎌倉武士たちの献立は簡素かつ栄養満点、まさに「質実剛健」。これが彼らの一騎当千の底力を支えていたのです。
参考資料
- 永山久夫『イラスト版たべもの日本史』(1998年・河出書房新社)
- 学ぶ・教える.COM「平家物語 – 巻第八・猫間 『ある時、猫間中納言光隆卿といふ人…』 (原文・現代語訳)」
- 和樂web 日本文化の入り口マガジン「鎌倉時代へ時を戻そう。人骨もみつかる、かつての最恐スポット「由比ヶ浜」の歴史」
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