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豊臣秀吉の朝鮮出兵がモデル?中国の歴史小説『水滸後伝』に登場する強敵「關白」の奮戦ぶり

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關白は本名不詳、武勇を誇る身の丈八尺(明王朝の一尺は約23cm≒約184cm)の豪傑で、白い象に騎乗する姿はちょっと日本人離れしていて、かつて皆から「猿」「禿げネズミ」などと呼ばれていた秀吉本人とは随分ギャップがあります。

そんな關白は黒鬼(ヘィグィ)と呼ばれる五百名の特殊部隊を率いており、彼らは昼夜ずっと海中で暮らし、獲った魚介類も生のまま食べてしまうようなワイルド集団。

自由自在に泳げるので、敵の船底に穴をあけ、沈めてやろうと仕掛けますが、元々梁山泊での水上生活に長けていた好漢たちによって、返り討ちとされてしまいます。

小細工が通用しないなら、と正々堂々奮戦した關白たちでしたが、最後は『水滸伝』シリーズのお約束・妖術によって退治されて(全員凍死して)しまったのでした。

(※余談ながら『水滸伝』シリーズでは、多くの戦いは妖術によってオチ=決着がついており、『水滸伝』本編では腕利きの妖術使いが戦線離脱してしまったことが、多くの仲間を失った原因として描かれています)

「敵ながら天晴れ」リスペクトの精神から生まれたキャラクター

象に騎乗して奮戦する身の丈八尺の豪傑……この日本人離れした關白のキャラクターは、もしかしたら同時代に実在の暹羅国(アユタヤ王朝)で活躍した日本人傭兵・山田長政(やまだ ながまさ)らの雄姿も影響しているのかも知れません。

「敵ながら天晴れ」

最後は敗れてしまった豊臣秀吉ですが、その身の程知らずとも言える壮大な野望は一種の痛快感を呼び、単に侵略者への憎悪だけでなく、死力を尽くして戦った相手へのリスペクトを引き出した結果、關白というキャラクターが生み出されたのではないでしょうか。

※参考:
寺尾善雄 抄訳『水滸後伝』秀英書房、2006年2月
水滸後傳/第35回

 

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