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着物の柄から絵師・鈴木春信の代表作「風俗四季哥仙」を読み解く!春信の魅力 その4【後編】

着物の柄から絵師・鈴木春信の代表作「風俗四季哥仙」を読み解く!春信の魅力 その4【後編】

「伊勢物語」は「源氏物語」にも影響を与えたと言われ、江戸時代に多くの人に愛読されました。そして着物の柄に杜若や川の流れ、または八橋などが描かれていると『あ、これは伊勢物語の・・・』という風に読み取られる訳です。

このようなことは鈴木春信も知っていたでしょう。ですから“曲水の宴”から“川の流れ”→“杜若”と連想したことは想像にやすく、この着物に描かれた花は“杜若(かきつばた)”と考えられます。

座っている女性が着ている着物の柄は“わらび柄”だと思われます。

この柄は中年以上の女性が着用するものと言われています。中年女性を“年増女”とするならば、江戸時代には“数え20で年増、25で中年増、30で大年増と呼んだ”ということですので、この女性の年齢はまだ二十歳そこそこで少女の世話役の女性でしょう。

世話役の女性が、良家の子女と思われる少女に“和歌が詠めなかったら、あの盃のお神酒を飲まなければ”と声をかけている。

良家の子女である少女は“そんなお酒を飲むなんて嫌だわ”とでも言っている様子です。もしかするとこの少女は“曲水の宴”に出席するのは初めてなのかもしれません。

奥にいる子供は、この二人の女性の成り行きを興味ありげに眺めているようにも見えます。

実際に“曲水の宴”が若い男女の出会いの場ではなかったとしても、鈴木春信はそのような設定にしたかったのかもしれません。何故ならその方が面白いから。浮世絵は事実をそのままに写し取るものではなく、作者の感じる世界を創造して描かれています。

3ページ目 春を迎える人々の高揚感を高めた「曲水の宴」

 

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