
大河ドラマ「べらぼう」で遊女の爪がほんのり赤いことに気が付いた?〜 江戸時代の化粧と「紅色」
2月16日放送の「べらぼう」で、花魁・花の井の爪がうっすら赤くなっていたことに気が付きましたか?
あれは、「爪紅(つまべに)」といって、江戸時代の化粧の一つで、爪に赤い色をさすものでした。マニキュアは現代のものだけと思っていた方もいたのではないでしょうか。実は江戸時代以前から、古来日本には指先を赤く染める風習がありました。
赤は「魔除け」の意味合いがありますので、口、目、爪とすべてに赤をさし、体を守るまじないにしたというわけです。
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とはいえ素材は簡単に手に入るものではなく、位の高い人々しか施すことのできないものでした。
紅を塗った花魁
成分は何かといいますと、飛鳥・奈良時代は「紅殻」(べにがら)と呼ばれる酸化鉄(赤サビのもと)で、平安時代はホウセンカとホオズキの葉を揉み合わせたもので色を抽出し、爪にすりこみました。これを「爪紅」(つまくれない)といいます。
江戸時代になると、中国から紅花を使った染色技術が渡来。それを爪にも塗ったので「爪紅」(つまべに)と呼ばれるようになりました。
爪紅を施す女性を描く「絵本江戸紫」
違いは紅殻やホウセンカは「染める」。紅花は「塗る」。爪そのものに色素沈着を施すものと、爪の上に顔料の層がのるイメージの違いです。しかし両方とも現代のネイルアートから比べれば、うっすらとしたものだったでしょう。
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