「鎌倉殿の13人」がんばる実朝、苦悩する義時、そこへ近づく“第3の女”のえ…第34回放送「理想の結婚」振り返り:2ページ目
増長する時政と、武蔵国における畠山重忠との対立
さて、執権別当として我が世の春を謳歌していた北条時政(演:坂東彌十郎)。妻のりく(演:宮沢りえ)を喜ばせたい一心で賄賂を蓄え、己が権力を思う存分振りかざします。
地獄の沙汰もカネ次第……とばかり賄賂を持って来た者に便宜を図り、これでは訴訟が成り立ちません。
可哀想に、堀小次朗(ほり こじろう)なる御家人は必死の訴えを「忘れよう」の一言で突っぱねられてしまいました。
ちなみにこの堀小次朗について調べてみましたが、それと思われる御家人の名前がありません。恐らく架空の人物と思われますが、あえてこじつけるのであれば堀藤次親家(ほり とうじちかいえ。比企の乱にて粛清、登場せず)の縁者とでもいう設定でしょうか。
※あるいはスタッフの名前からとった(あるいはもじった)のかとも思いましたが、OPやEDのスタッフ表記を見ても、それらしい人名はありませんでした。
話を戻して、諫める宿老たちに「そんなことより、みんなで鮎を食おうぜ!」と懐柔を図る時政でしたが、政務の場で馴れ合いが許されないのは言うまでもありません。
義時の説教も馬耳東風、とどまるところを知らない時政の欲望は武蔵国へと触手を伸ばします。
畠山重忠(演:中川大志)を武蔵守にする代わり、先祖代々受け継いできた武蔵国留守所惣検校職(むさしのくにるすどころそうけんぎょうしき)の返上を要求したのです。
武蔵国留守所惣検校職(以下、長いので検校職)とは、京都にいて現地に赴任しないこと(これを遥任と言います)の多い国司(武蔵守)に代わって統治を管理する役職で、劇中では武蔵守を補佐する役目と言及していました。
武蔵守と検校職では、武蔵守の方が格上なんだから不満はあるまい……そう言わんばかりの時政でしたが、武蔵国における統治の実権(主に武士団の統率権)は検校職にあり、名目ばかりの武蔵守に押しやられたら武士としての力を大きく削がれてしまいます。
そもそも国司の地位は時政がちょっと口約束したくらいで簡単に任じられるものではなく、まさに劇中で重忠が懸念していた通り、体よく実権を奪おうとしている意図は明らかです。
この武蔵国をめぐる利害の対立が間もなく畠山重忠の乱(元久2・1205年6月22日)を惹き起こすキッカケとなるのですが、時政は先手を打とうと三浦義村に賛同を打診します。
かつて祖父・三浦義明(よしあき。作中では言及のみ)を討った重忠への怨みを煽る時政。いざ一戦交える時はどっちにつくかと訊かれて「決まっているでしょう」とほくそ笑む義村。
言外に時政へ味方すると匂わせておきながら、ハッキリと言質はとらせない。そんな狐と狸の化かし合いを繰り広げます。
伊豆の田舎侍がそのまま権力を持ってしまい、欲望に目が眩んでしまった時政の様子は、実に妙演の一幕でした。