「鎌倉殿の13人」一幡の死と頼家の追放。そして……第32回放送「災いの種」振り返り:2ページ目
命名は源「実」朝、京都と鎌倉をつなぐ役割を期待
「またお得意の夢か。して、どんな夢を」
ところ変わってこちらは京都。双六のコマを高く積み上げて遊んでいる後鳥羽上皇(演:尾上松也)。こういう風に積み上げたものは、必ず後で盛大に崩すのがお約束。
その傍らには初登場の慈円(演:山寺 宏一)が控えています。今後、彼の見た「夢」が朝廷の意向に大きく影響するのかも知れません。
夢の話を総合すると「次の鎌倉殿はかつて壇ノ浦で失われた宝剣(三種の神器の一つ)の代わりだから大切にせよ」とのこと。
ならば、千幡の元服に際してよい名を授けてやろう……ということで、「頼朝の息子だから、ナニ朝がよかろうか」と後鳥羽上皇。
板の接合面である実(さね。実矧-さねはぎ)からとって源実朝(さねとも)。朝廷と鎌倉をつないでくれる役割を期待してのことでした。
ちなみに、千幡改め実朝の命名については『愚管抄』に記録があります。
……千万御前元服セサセテ。実朝ト云名モ京ヨリ給ハリテ……
※慈円『愚管抄』より【意訳】千幡を元服させて、実朝という名前も京(=朝廷≒後鳥羽上皇)から賜って……
朝廷の意向は後鳥羽上皇の意向。果たして実が実矧工法からとったかまでは書いていないものの、実朝が上皇を父とも兄とも慕い、その期待に応えようと頑張ったのでした。
しかしそれが故に執権・北条義時と事あるごとに対立。朝廷に近づこうとする実朝と朝廷と距離をとりたい義時のせめぎ合いは生涯にわたって続きます。が、それはもう少し先の話し。
時を戻して、晴れて第3代の鎌倉殿に就任した源実朝。その傍らには、乳母として彼を育ててきた実衣(演:宮澤エマ。阿波局)のほくそ笑む姿が。
かつて曽我兄弟の襲撃事件でのぞかせた権力への野心が結実してご満悦の実衣。彼女が着ていたのは、何とも禍々しいワインレッド。彼女にとっては吉ながら、源氏にとっては凶となる平家の赤が、これからの展開を予感させますね。
後に実朝が暗殺されて権力基盤を失い、ならば次の鎌倉殿にと嫡男の阿野時元(あの ときもと)に一縷の望みを賭けて謀叛をそそのかす未来が目に浮かぶようです(※あくまでも予想です)。