「鎌倉殿の13人」一幡の死と頼家の追放。そして……第32回放送「災いの種」振り返り:3ページ目
強くて忠義に篤く、バカ…ず(場数)を踏んできた仁田忠常の最期
義時「急ぎ館へ戻らねばならぬ。又にしてくれるか」
忠常「……かしこまりました」
頼家から時政暗殺を命じられ、主君への忠義と北条への情義の板挟みとなった仁田忠常。どちらも裏切れない彼が選んだのは自刃という最期でした。
『吾妻鏡』だと時政の館へ褒美をもらいに行き、話が盛り上がったのか帰りが遅くなったために一族郎党が「時政暗殺の密命がバレて殺されたか」と誤解して謀叛を起こしてしまい、進退窮まった挙げ句に殺されるという残念なオチ。
大河ドラマのアレンジは、どこまでもまっすぐな忠常の魅力=視聴者の悲しみを引き立てる絶好の演出となったものの、個人的には「自刃するなら、自宅でやれ」と感じました。
和田義盛のように善後策を相談するならともかく、自刃を見せつけるなんて当てつけ以外の何物でもありません。ちょっと意地の悪い言い方をするなら「止めて欲しかったのか」とさえ思ってしまいます。
それにしても、時政の暗殺についてその息子である義時に相談するくらいなら、直接本人に打ち明けるのとそう変わらないのではないでしょうか。「又にしてくれ」と断った義時に良心の呵責(まだそんなものが残っていると仮定して)を負わせるだけの結果となりました。
また、仁田忠常ほどの豪傑であれば自刃に際しては頸動脈をバッサリ切って血を噴き出させ、その血が止めようとした北条泰時(演:坂口健太郎)の顔面にベッタリかかるくらいのインパクトが欲しいところ。
泰時と視聴者の心をどこまでもボコボコに痛めつけ、それでも理想を求め続ける姿こそ、視聴者の求めるカタルシスにつながるのではないでしょうか。
一幡とトウと善児
さて、そんな泰時は前回どうしても一幡を殺せず、善児(演:梶原善)とトウ(演:山本千尋)師弟に預けていました。
「あれは、生きていてはいけない命だ」
そう言い放つ義時に、善児はどうしても殺せないと命令を拒否します。
「(かつて第1回で殺した)千鶴丸と、何が違う」
「わしを、好いてくれている」
今まで人に好意を向けられたことのなかった善児に芽生えてしまった人間らしい感情。しかし千鶴丸(演:太田恵晴)はそんなに善児を嫌っていた様子もなかったはず……まぁ、その時はトウを拾って育てる経験もしていないし、親代わりになって初めて解るようになったのでしょう。
でも、義時にそんなことは関係ありません。善児が殺せないなら自分が……と進み出たところで、それを察したトウが一幡をかばう形で「トウと水遊びをいたしましょう」と連れ去ります。
(かつて、お前もこういう手口で一幡よりもっと小さな幼子を殺したんだよな?)
去って行ったトウの背中が、そのように語っていたのか、あるいはただの偶然(義時の前から連れ去るための方便)か……善児にしてみればなかなか心抉られる展開となりました。
泣きながらブランコの綱を断ち切る善児。もうこれで遊ぶ子はいないので、こんなものは要らないのです。
これまでOPクレジットにその名が出ただけで人の死を予感させた善児ですが、いよいよ焼きが回ってきたのでしょうか。
(これはもう使い物にならんな)
好感度が上がると死亡フラグが立つ。そんな本作の法則からすると、遠からず粛清されるものと予想されます。
案外あっけなく殺されるのか、それとも兄・北条宗時(演:片岡愛之助)の仇として心行くまでなぶり殺しにされるのか、宗時の遺品が登場する次回のお楽しみですね。