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「鎌倉殿の13人」梶原景時、暴走する源頼家の犠牲に…第28回放送「名刀の主」振り返り

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訴訟の評議に登場した大谷太郎と大谷次郎って実在するの?

冒頭、大江広元(演:栗原英雄)の主導によって始まった土地争いの評議。

訴え出たのは、常陸国(現:茨城県)の御家人である大谷太郎(おおやの たろう)と大谷次郎(じろう)兄弟。

太郎の曰く「土地は自分が亡き父から受け継いだものであり、その一部を求める次郎の要求は不当」と主張。対する次郎は「土地は自分が父から譲り受けた」と反論しているようです。

これに対して太郎と親しい北条時政は太郎に肩入れし、三浦義澄もこれに同調。更には和田義盛も「次!」と有無を言わせない様子ですが、比企能員はこれに異議を唱えます。

「知っているだけで肩を持つのはどうか」

と言いながら、比企は一族の婿である次郎を遠回しに支持します。

時政「政に私情を挟むんじゃねぇ」
比企「どの口が!どの口が!」
和田「表に出ろ!」
比企「表に出ろと言われて表に出てよかったためしはない!」

誠にその通りですが、口ぶりから察するに若い頃は実際「表に出た」経験があるようです。比較的お上品なようでいて、やっぱり比企も坂東武者なんですね。

すると比企から賄賂をもらって(嗅いで?)いた八田知家(演:市原隼人)が口添えします。

八田「どうもひっかかる。その土地でずっと米を作らせてきたのは、太郎ではなく次郎のはずだ」

そもそも大谷兄弟の父親が亡くなったのは、20年以上も昔のこと……調べたところ、父親が亡くなってからの20年間、土地を耕して管理していたのは次郎とのこと。

だったらどう考えても土地は次郎のものと思えますが、なぜ太郎は今ごろ訴え出たのか……義時の察するところ「鎌倉殿の代替わりしたどさくさ紛れでワンチャン次郎の土地を奪えると狙ったのであろう(意訳)」と。

頼家政権は、実にナメられていたようです。しかし問題はそこではありません。

景時「誼を重んじ便宜を図るのは政の妨げになるので、以後やめていただきたい!」

公平公正・頑固一徹な景時が宿老たちを一喝して評議は終了。コネやしがらみの多い鎌倉幕政に先が思いやられるのでした。

……ところで、この大谷兄弟は実在するのでしょうか。調べてみてもこれと言った人物が見つからないので大河ドラマの創作である可能性が高いです。

それでは大谷の苗字もテキトーなのでしょうか。そう(例えばスタッフの苗字など)かも知れませんが、あくまで仮説ながら大谷という土地を治めていた武士がいたとしたら、どの辺りにいたのか考察してみます。

現在の茨城県で大谷という地名(大字)が残っているのは、稲敷郡美浦村。霞ケ浦の南西に面し、千葉県ともほど近い場所に位置する自治体です。いいところですね。

八田知家と面識が深いようですが、知家が常陸国を領有=本拠地の下野国(現:栃木県)から移転したのは建久4年(1193年)以降ですから、治承年間(~1180年)に亡くなっている父親と恐らく面識がありません(亡くなった時期については兄弟から聞いていたのでしょう)。

太郎と次郎の兄弟がいて、太郎は時政と親しく、次郎は比企の娘婿……果たして誰かモデルはいるのでしょうか。

ストーリーの流れとは全く関係がない(13人の合議制がコネとしがらみにとらわれてまともに機能しなかった、と描写するためだけの)場面なのでどうでもいいと言えばいいのですが、たまたま大谷と名づけられたのも何かキッカケがあるのでしょうから、色々考えてみても楽しいものです。

終わりに

かくして始動したと思ったら、早くも脱落者が出てしまった13人の合議制。もはや「看板に偽りあり」状態です。こんなグダグダな状態で、京都の後鳥羽上皇に太刀打ちできるのでしょうか。

次週放送の第29回は「ままならぬ玉」。並べられた首桶、「見ました?」と尋ねる善児、呪いに使う?木偶人形、アクションシーンを見せる女性、投げ放たれる飛刀(くない)、「鎌倉から放り出せ!」叫ぶ頼家……。

そして「次郎!」時政の涙は、恐らく景時の死を追うように世を去った悪友の三浦義澄(通称:次郎)に向けられたものでしょう。

サブタイトルは蹴鞠を連想させますが、ダブルミーニング(掛詞)であればもう一つの意味は何なのか、次回までの宿題ですね。

※参考文献:

  • 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 後編』NHK出版、2022年6月
  • 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 続・完全読本』産経新聞出版、2022年5月
 

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