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紙背文書、漉返紙…紙が貴重だった昔のリサイクル術を紹介

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漉返紙(すきかえしがみ)

さて、両面とも使ってしまった紙は、さすがに人には出せなくなります。

そうなったら今度は紙をドロドロに溶かして再び漉く(漉き返す)ことで復活させるのですが、そうした再生紙を漉返紙と呼んでいました。

漉き返すと元の紙に書かれていた墨が水に溶けて付着するので、元の紙よりも暗い薄墨色になるため、薄墨紙(うすずみがみ)と呼ばれたほか、古いことを意味する宿紙(しゅくし)、熟紙(じゅくし)などの呼び名もあります。

また、昔は親しい人が亡くなると、その故人が書いた手紙などを紙背文書として、あるいは漉き返して写経することで供養する習慣があり、死者の魂を反(かえ)す反魂紙(はんごんし)、還魂紙(かんこんし)などとも呼ばれたそうです。

そんな紙のリサイクルは庶民のみならず朝廷においても行われており、用事が済んで不要となった大量の公文書を図書寮紙屋院(ずしょりょう かみやいん。紙の製造を担当)で漉き返したため紙屋紙(かみやがみ、こうやがみ)と呼ばれました。

(※ただし、漉き返しに限らず新品の紙でもこのように呼ばれています)

新品の紙は貴重なため、天皇陛下の命令においても略式である綸旨(りんじ)では漉返紙を用いており、そのため綸旨紙(りんじがみ)とも呼ばれています。

終わりに

そんな紙背文書、漉き返しの文化も、紙の大量生産が可能となった江戸時代以降は衰退。往時を偲ぶ愛好家に向け、あえて新品の紙に墨を混ぜて漉いたものが薄墨紙などとして使われたそうです。

紙が潤沢に使えるようになって庶民の文化が幅広く栄えた反面、粗末に扱われるようになってしまったことも否めません。

だからこそ紙や資源の節約を「しみったれ」「せせこましい」などと感じるのでしょうが、生活になくてはならないものだからこそ、改めて感謝の思いで使いたいものです。

※参考文献:
国史大辞典編集委員会『国史大辞典』吉川弘文館、1984年1月
田中稔『中世史料論考』吉川弘文館、1993年10月

 

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