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浮世絵師・鈴木春信は何故か「空を飛ぶ女」を描くのがお好き

浮世絵師・鈴木春信は何故か「空を飛ぶ女」を描くのがお好き

なぜ「費長房」なのか

“費長房”はとても有名な人物ですが、何故鈴木春信はあえて“費長房”を題材として用いたのかということについて考えてみました。

実は「曾我物語」の中に“費長房の話”が書かれているのです。

「曾我物語」と言えば、江戸時代に能や人形浄瑠璃そして歌舞伎などで何回も催された江戸の人々に大変人気のあった物語です。

「曾我物語」の内容を簡単にご説明すると、“幼くして父を殺された曽我十郎と曽我五郎の二人が、長年の間苦労を重ねながらついには源頼朝が富士の裾野で行った巻狩において父の仇討ちをする”という話であり、日本三大仇討ちの一つと言われています。

 

 

この「曾我物語」の事の始まりとなる曽我兄弟の父親が殺される場面で、“費長房の話”が出てくるのです。

話の細部には多少の違いが見られます。

「曾我物語」では、費長房は壺公が壺に入るのを見て、この人は只者ではないと考え3年間壺公に仕えます。壺公が『何故3年もの間、私の言うことに一つの違えもなく従い仕えているのか』と聞くと、『私は仙人になりたいのです。どうか壺の中に入る術を教えて下さい』と答えます。

壺公は『それならば私の袖につかまりなさい』と言い、二人は壺の中に入りました。

壺の中は大変素晴らしい世界が広がっていました。費長房はそれらをじっくりと見回ると『さあ壺から出ましょう』と言います。

壺公は長房に竹の杖を与えて『それを付いて出よ』といい、費長房が杖をつくとあっという間に元の世界に戻りました。その杖を捨てると、杖は龍となって空に昇っていきました。

そして費長房も鶴にのって空に昇っていきました。これも費長房が長年の間、功を積んだために出来たことなのです、というように描かれています。

このように“費長房は鶴に乗って空に昇っていった”ということは「曾我物語」を通して江戸時代の人々に知られていたことであり、題材として庶民にも受け入れられやすいものだったのです。

3ページ目 もう一度「やつし費長房」を見てみましょう

 

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