浮世絵師・鈴木春信は何故か「空を飛ぶ女」を描くのがお好き:4ページ目
鶴の上に乗る遊女
鈴木春信の作品には他にも鶴に女性が乗る絵があります。
上掲の「鶴上の遊女」はその名の通り、華奢な手をついて長い文を読む、品の良い顔立ちの遊女が鶴の上に乗っている姿を描いています、と言いたいところなのですが。
鶴に乗った人物が「費長房」かどうかの見分け方は、手に書物か巻物を持っていること。
すると、この作品の遊女が持つ文も巻物の形状をしているところから“費長房の姿を遊女にやつしたものとではないか”という見方も出来るのです。
キセルか何かを持っていてくれれば深読みせずにすむのに・・・。
ともあれ、この作品で注目すべきは“鶴”だと思います。鶴の羽毛の部分は“きめ出し”という手法がとられており、鶴に触れれば羽の柔らかさを感じられるかのような技法は秀逸です。
いずれにせよ、この作品を描くにあたり鈴木春信の心中を“費長房”がよぎったことは間違いないでしょう。
最初に、鈴木春信を“浮世絵の大家”と記しましたが、それであるがゆえに世俗にまみれざるを得ない部分もあったでしょう。世俗にまみれていない人間などいないのかもしれません。だからこそ当時の人々は穢れなき存在とされる仙人にも憧れ、鈴木春信もそれを求めたのかもしれません。
まだまだ鈴木春信が描く「飛ぶ女」はありますが、またいずれかの機会に。
(完)