現代なら炎上必至!日本各地のお国柄をまとめた「六十六州人国記」が毒舌すぎる【中四国&九州編】:5ページ目
大分県(豊前国・豊後国)
【豊前国】
こいつらは馬のようなもので、見かけは名馬のようでいて、いざ乗ってみると癖が強くてめんどくさい曲馬(くせうま)ぞろい。
とことん性根がなく、いくら忠孝義理を教えてもめんどくさがって向上心がない、これからは曲馬国とでも改名すればいいのに。【豊後国】
百人いれば九十人は偏屈で、多少はマシな残り十人も周囲の九十人に流されて堕落していく。勇気はあるが道理を知らずに暴走することが多い。
癖の強さを「お前(作者)に言われたくないよ」と思ってしまいますが、具体的に豊前人のどこがどう面倒だったのか、書くのを面倒がった作者も五十歩百歩な印象です。
また、豊後国については行かなくても書けるテキトーな内容であり、だったら無難に褒めておけと(以下略)
熊本県(肥後国)
だいたい肥前国に似ているけど、勇気にかけては肥前国の1/100程度である。武士たちも肥前に比べて軟弱、でも筑前や豊前よりは上である。
知性はあるがそれゆえに理屈っぽく、思い思いに行動するので団結することを知らない。
勇敢なイメージで知られる「肥後もっこす」「九州男児」たちが聞いたら怒り出しそうな貶しぶり(ここに限った話ではありませんが)。
しかしどこより上だの下だの、作者はどれだけ勇猛果敢なのかと訊いてみたくなります。
宮崎県(日向国)
この国の連中は気が荒くて乱暴狼藉ばかり働き、事の善悪を考えもせず口論になればすぐにカッとして相手を殺す野蛮人ぶりにうんざりである。
命を捨てることがカッコいいと思い込む過激思想が蔓延している。あぁ恐ろしい恐ろしい(恐るべし恐るべし)。
作者は殺されかけでもしたのでしょうか(ハイそこ、舌打ちしない)、まるで世紀末的な光景が、作者の偏見か妄想であることを願うばかりです。
鹿児島県(大隅国、薩摩国)
薩摩も大隅も大した違いはなく、どいつもこいつも「男が畳の上で死ぬなど恥、戦場での討死こそがカッコいい」と思い込み、神も仏も蹴散らす勢いで暴れ回って無駄死にする様は論ずるに値しない。
また、平時においては主君が姿勢を正していても、家臣は足を投げ出したり、あるいは立て膝で(足をのべ或いは立てながら)臨席することも多く、主従関係もへったくれもない無礼者ばかりである。
ついに大トリですが、日向国かそれ以上に暴れん坊揃いだったようで、きっと作者も「議を言うな(つまらぬ御託を並べるな)!」と斬りかかられたことでしょう。
余談ながら、薩摩・大隅の両国においては一般的に行われていたらしい立て膝座りは、作者の価値観からすると「無礼(主君の前ですべきではない座り方)」と見られていたようです。
終わりに
……さて、北海道(蝦夷地)と沖縄県(琉球国)を除く天下六十六州の「お国柄」を見て来ましたが、皆さんの地元はいかがだったでしょうか。
大半の方が「ふざけるな!」と思っていることは想像に難くありませんが、きっと各地を旅した本当の作者は、その道中で良かったことや嫌なこと、様々あったのだと思います。
現代に比べて旅の移動手段も限られ、身の安全も保障されていなかった時代のことですから、ボロッカス書かれたことはさておき、作者の苦労に思いを馳せてみると、大らかな気持ちになれるかも……と、相州人(神奈川県民)の筆者は自分に言い聞かせてみます。
※参考文献:
北条時頼『六十六州人国記』東京洛陽堂、明治44年5月