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痛々しいけど愛おしい♡室町時代の中二病文学「閑吟集」より特選14首を紹介【上】

痛々しいけど愛おしい♡室町時代の中二病文学「閑吟集」より特選14首を紹介【上】:3ページ目

4、やれ 面白や えん 京には車 やれ 淀に舟 えん 桂の里の鵜飼舟よ

「やれ」と「えん」は囃し立てる掛け声。京都近郊の名物をテンポよく並べた一首です。

京の都には牛車が行き交い、淀川(よどがわ)にはたくさんの舟、そして桂川(かつらがわ)の鵜飼……ただそれだけの内容ではあるのですが、こうした風景が多くの人々から愛されていたのでしょう。

もちろん、京の都にはもっとたくさんの名所・名物がありますから、そうした歌も多く詠まれていたものと思われます。

5、仰る闇の夜 仰る仰る闇の夜 つきもないことを

【意訳】あなたは「闇の夜に逢おう」と仰(おしや)るけれど、何度も何度も仰るけれど、月もないので逢えません。

仰るを「おしやる」と変化させると、現代語の「おっしゃる」に比べて、語感がちょっとガサツでつっけんどんな印象。

下心むき出しの無粋な男が「闇夜に逢おうよ、逢おうよハァハァ」としつこく押しやり(仰り)迫って来るのを、うんざりしながらあしらう女性の表情が目に浮かぶようです。

また、「つきもない」には「とんでもない」「不相応な」という意味もあり、「この下郎め、私に相応しい相手かどうか、鏡を見てから出直していらっしゃい」というメッセージも込められています。

……さて、ちょっと長くなってしまったので、続きはまた次回とさせて頂きます。

【続く】

※参考文献:
浅野建二 校注『新訂 閑吟集』岩波文庫、1989年10月16日

 

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