あらゆるものに神は宿る!絵師・伊藤若冲の名作「動稙綵絵 池辺群虫図」をじっくり鑑賞&解説:2ページ目
この絵の“地面・池”の部分が描かれています。まずこの絵を観て一番先に目についたものは何でしょうか?筆者は池の中にいる“おたまじゃくし”と“蛙”です。
地球という星の特徴は「水」があったことだと言われています。「水」があったからこそ“生物”が生まれたのだという説です。おたまじゃくしが食べる微生物などが水の中にいたからこそ、蛙へと成長していくのだという単純なことが腑に落ちます。
次に目についたのは、池の周りに蔦を這わせて緑の実をつけている“瓢箪”です。この瓢箪の純白の花が、少し湿気の多いこの景色の中に、爽やかな表情を与えているように思えます。
しかも瓢箪が蔦を這わす植物であることから、水面や地面から微妙な空間を生み出していることが、何か不思議な浮遊感を現しているようです。
ただこのことから、この絵は【啓蟄】という“時期”を描いた絵ではないことが分かります。瓢箪が花を咲かせ実をつけるのは「夏」だからです。
そして瓢箪の実には毒があります。何故、若冲は毒のある植物をメインとなる植物に選んだのでしょうか。
上掲の絵の上の方に、瓢箪の葉の上に“カブトムシ”がいるのが分かりますか?カブトムシも言わずもがな、夏の昆虫です。
その下部の葉の上には“くつわ虫”がいます。とすると、“ガチャガチャガチャガチャくつわ虫・・・秋の夜長をなきとおす~♪”の「むしの声」の歌でおなじみのフレーズが思い出されます。つまり秋の虫も書き込まれているということですね。
水辺に住むイモリのお腹はあくまでも赤く描かれ、この作品が徹底的な写実に基づいた『動植物図鑑』のようでありながら、若冲がこれら生き物を描く眼差しはとてもあたたかく感じられるのです。
この『動植綵絵』“池辺群虫図”の絵には“アリ”の姿まで確認することができ、絵下部の部分だけでも30種類以上の生き物が描かれています。
それでは次にこの絵の上部を見てみましょう。