最後の浮世絵師”血みまれ月岡芳年”は大奥と歌舞伎界の大事件「絵島生島事件」をこう斬った!:2ページ目
月岡芳年が描いた「生島新五郎之話」
そこでこの浮世絵です。この絵を見たとき筆者はまず絵島に目がいき、なんと感情的な絵だろうと思いました。
風に吹かれる絵島は、開放感に満ち溢れた喜びの表情をしています。生島新五郎は蒸しかえすような暑さに胸をはだけて扇子をあおいでいます。肌が透けるような薄い着物を着ているというのに。
しかし生島新五郎の表情をよく見てみると
この表情。どう思いますか?喜びの欠片も見られません。絵島を見上げて困惑した顔です。“なんだかこれはマズイぞ”といった感じです。
汗をぬぐう絵島の笑顔とは正反対の表情と言ってもいいでしょう。ただ、中指と薬指の間に布もしくは懐紙をはさんで汗を抑えているのが、動揺を感じさせます。笑顔の中にも何か思うところがあるような気もします。
とにかくこの絵から読みとれることは、この絵の舞台は多分、山村座の隣の2階の部屋であること。芝居小屋の建物の看板左端にに“生島”の文字、右端に“山村”という字が見えます。
奥の部屋には行灯の火が灯り、蚊帳が掛けられていること。つまりそこには布団が敷かれているであろうこと。
この館には大きな提灯があり、提灯に下げられた風鈴を大きく揺らすほどの風が吹いています。そして提灯には歌舞伎役者の定紋が染め抜かれています。
右端の提灯に生島新五郎の定紋、そして左端の提灯には市川團十郎の定紋も。。。