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大河ドラマ「鎌倉殿の13人」佐藤浩市の熱演に期待!上総介広常の強烈なキャラクター【下】

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」佐藤浩市の熱演に期待!上総介広常の強烈なキャラクター【下】

古参の老臣・岡崎義実との大喧嘩

さて、頼朝公の武士団にとって欠くべからざる柱石となっていた広常ですが、彼は偏屈なキャラクターで周囲を辟易させることもしばしばありました。

例えばある時、宴会の席で老臣の岡崎悪四郎義実(おかざきの あくしろうよしざね)が頼朝公に褒美をねだり、頼朝公は着ていた水干(すいかん。男性装束の一種)を与えたところ、義実はもう大はしゃぎ。

やれ嬉しや、あぁ嬉しや……くるくると袖を舞わし、あまりの無邪気さに「かの豪傑悪四郎(にくらしいほど強い四郎、の意)も、御殿の水干に童(わらべ)のようじゃ」と周囲も大爆笑。大盛り上がりだったところへ、嫉妬したのか広常が憎まれ口を叩きます。

「この美服は広常が如きが拝領すべきものなり。義実の様なる老者が賞せらるるの条、存外」
※『吾妻鏡』より

【意訳】こういう立派な装束は、この広常のような立派な者にこそ似合い(から拝領すべき)であって、義実みたいな老いぼれにくれてやるなんぞ、もったいないわい!

これにカチンときた義実、老いたりといえども悪四郎の顔になって反論しました。

「広常功有るのよしを思ふといへども、義実が最初の忠に比べ難し。更に対揚の存念有るべからず」
※『吾妻鏡』より

【意訳】てめぇ、大軍を恃みに偉そうなことを言いやがるが、御殿の挙兵当初から馳せ参じ、石橋山の窮地を駆けずり這いずり切り抜けた我が忠義とは比べ物にならぬわ!後からノコノコやって来て、対等なクチを利こうとするンじゃねぇ!

「うるせぇ!てめぇらがしっかりしてねぇから、御殿が窮地に立たされたンだろうが!後だの先だの偉そうに言ってンじゃねぇよ!」

「やンのかコラ……!」

互いに刀へ手をかけたところ、御家人・佐原十郎義連(さわらの じゅうろうよしつら)の機転で事なきを得たそうですが、いやはやまったく困ったものです。

何人に対しても下馬などせぬ

……またある時、頼朝公が浜辺を馬で散歩していたところ、多くの御家人が平伏したところ、広常だけは下馬することなく会釈で通り過ぎました。

「いくら何でも無礼であろう!」

御家人の一人が咎めたところ、広常は平然として答えます。

「公私共に三代の間、未だその礼を成さず」
※『吾妻鏡』より

【意訳】祖父の代から、誰に対してであろうとわざわざ下馬して礼をとることはない。

むしろ「この自分が会釈してやっているのだから、それで十分だろう」と言わんばかりの傍若無人。主君である頼朝公に対してさえもこの態度です。

「御殿、あの人も無げなる振る舞いを見逃れまするか!」

「まったく、主に対して何という不忠……!」

己の武力と軍勢を恃みにその矜持を貫き通す坂東武者らしさと言えばらしさですが……これでは今後、武士団の秩序を保っていく上で差し障りが出てしまうでしょう。

「……まぁ、悪気もないのであろう。捨て置け……今はのぅ」

悠然と去っていく広常の背中を見送り、頼朝公は静かに御家人らを宥めました。

3ページ目 広常を暗殺せよ!梶原景時に指令下る

 

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