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小川未明「赤いろうそくと人魚」の元ネタは、悲しくも恐ろしい悲恋話だった

小川未明「赤いろうそくと人魚」の元ネタは、悲しくも恐ろしい悲恋話だった

物語のモデルは、未明の地元に伝わる悲しくも恐ろしい悲恋話だった


人魚と蝋燭という、一見すれば奇妙な取り合わせですが、これには小川未明の地元である新潟県上越市に伝わる説話がモデルになっています。雁子浜という土地に住んでいる青年が常夜灯を神社に灯していると、佐渡島からそれを目当てに美女がきます。

許嫁がいるにも関わらず青年は美女と密会するようになるのですが、母が引き止めたために青年は献灯を怠け、結果として遭難した恋人は溺死します。それを後悔した青年は自害してしまい、地元民は二人を供養した塚を作りました。それが人魚伝説になり、未明の童話が書かれたのです。

如何でしたか?美しい悲話として親しんだ『赤いろうそくと人魚』も、元ネタを把握していると大人になってから読み直す時に味わい深くなることと思います。また、人魚という不幸さをもった異形の存在が描かれた背後には、“未明がお世話になった足の不自由な女性”や、戦前に横行していた人身売買などがあるとする説もあります。

これも子供や障害者への温かいまなざし、そうした弱者に対する偏見と虐待を許さなかった正義感の強さで知られる未明らしいエピソードとも言えますね。なお、『赤いろうそくと人魚』は青空文庫にて無料で読むことができますので、興味のある方はご一読をば。

赤い蝋燭と人魚 小川未明

 

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