流されずに、走る灯籠?京都近郊で独自のお盆文化を継承する「佐伯灯籠」
灯籠流しを目にする機会が増える季節となりました。
亡くなった人の霊をこの世へ迎える、お盆。その霊を迎えるために掲げられ、そして霊を改めてあの世へ送り返すために流される、紙&蝋燭で作られた灯籠。文字通り夏の風物詩といえる、しんみりとした光景です。が、この紙で出来た灯籠、必ずしも流されるばかりではありません。
京都ではかつて、公家の間で華美な装飾を施した灯籠を贈り合う風習が存在したといえいます。その風習はやがて民衆に流布し、後には頭に灯籠をかぶって盆踊りを行う「灯籠踊り」なる風俗も出現したとか。この風俗は都の周辺エリアにも伝播し、都心部で流行が去った後も存続。遂には、現代に至るまで存続してるケースもあったりします。
以前こちらで触れた八瀬の赦免地踊りも、そんな「灯籠踊り」のひとつと見られている祭。そして、京都近郊の亀岡市にてお盆の頃に行われる佐伯灯籠もやはり、灯籠の風習の影響を受けたと考えられている祭です。
祭の名前に「灯籠」と入ってるくらいですから、佐伯灯籠にももちろん、灯籠が登場。それも、しんみりと流れるような灯籠ではなく、極めてカラフルに彩色され、おまけに人形までデコられた灯籠が5基、現れます。このデコ灯籠、担いで爆走しやすいよう柄が付けられ、祭のクライマックスでは巨大な神輿と追いつ追われつのチェイスも展開。正しく、走る灯籠です。
佐伯灯籠ではこのデコ灯籠だけではなく、人形浄瑠璃が演じられる屋台のような台灯籠も登場します。こちらの人形浄瑠璃がまた、一人遣いのプリミティブなスタイルながら、深い表現力を持つもの。京都の文化が独特の距離感で伝播し、そして独特の形で継承され続けた結果のスタイルといえそうですが、それだけとは思えないミステリアスさもあり、実に魅力的です。
ありきたりな風習のようでいて、実は多彩な文化のあり様を生んでいる、お盆。あなたの近所のお盆でも、よくよく見てみると、結構面白い何かが見つかるかも知れません。