大都会新宿の盆踊りに見る 姉さんたちの一夏の思い出
お盆になると、各地では盆踊り大会が模様されます。
盆踊りと言えばかつては若者たちの「無礼講」の場。今でも夏祭りでは「お祭りベイビー」ができやすいと言いますが、夜を徹しての男女の交歓の場であった盆踊りは、つい四~五十年ほど前まではどの地域にも当たり前のようにあったというから驚きです。
では現代の盆踊りはどうなっているのか?都会の盆踊り事情を探索しようと、新宿の花園神社の盆踊り大会に潜入しました。大都会東京の盆踊り、しかもすぐ隣は大歓楽街の歌舞伎町。さぞかし乱れた雰囲気が漂っていると思いきや…。
大団円の輪の中にいるのは、ほとんどシニア。
韓流アイドルの「少女時代」さながらに、白地に紺の揃いの浴衣が艶やかでございます。おそらく地元の盆踊り愛好会の皆様方でしょうか。「ドンバン節」から「東京音頭」まで、美しい手さばきで踊っていらっしゃいます。
肝心の若者たちと言うと、浴衣姿のカップルたちもちらほらは見かけますが、踊りの輪に入る様子もなく、焼きそばやラムネをほおばりながら雰囲気を楽しんでいる草食系。
一方太鼓が鳴り響く櫓の上のお立ち台ギャルも、オールシニア姉さん。姉さんたちもかつては「♪おどるー君を見てー、恋がー始まってー(←小室哲哉のglobeです)」、ジュリアナかヴェルファーレみたいに盆踊りではブイブイ言わせていたのかもしれません。エネルギッシュに踊りまくる様子は、かつての肉食時代を偲ばせます。
盆踊りの無礼講が廃れていった背景には、やはりダンスホールやディスコをはじめとした若者の交流の場が多様化があるのでしょう。しかし娯楽の少なかった昔、一年に数回しかなかった無礼講の場はおそらく今の若者にはない、猛烈なエネルギーを秘めていたと考えられます。
娯楽が豊富になるにつれて、こうしたエネルギーは拡散し、いつしか淡白な恋愛草食時代に突入していったのでしょうか。日本で最も華やかな街、新宿の盆踊りは、むしろ上品な盆踊り会場の一つになってしまったようです。