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大河『べらぼう』蔦屋重三郎・瀬川・鳥山検校、それぞれの「夢噺」と「苦悩」を回想しつつ考察【後編】

大河『べらぼう』蔦屋重三郎・瀬川・鳥山検校、それぞれの「夢噺」と「苦悩」を回想しつつ考察【後編】:2ページ目

金では買えない「心」を手に入れたかった検校の夢

瀬以を喜ばせようと、家に着物や装飾品のかんざしを扱う業者を呼び寄せ「好きなものを買いなさい」というも、「ならば、吉原の松葉屋にいる遊女たちに着物を買ってください」と瀬以に頼み込まれてしまいます。

いつまでも吉原への想いを忘れない瀬以にがっかりしたのか「どうせ私にはお前の姿は見えないし」と言い、瀬以の要望通りに松葉屋に反物を届けるのでした。

「読み聞かせ」で瀬川の声を聞きたかった検校の夢…

さらに、瀬以のために書庫にたくさんの本を並べて「本が好きだったな」という鳥山検校。最初は「わぁ〜」と華やかな喜びの声をあげる瀬以に、検校も嬉しそうに微笑んでいましたが、瀬以の「これなら退屈しないで済みます」という一言に表情がさっと曇りました。

鳥山検校は、ただ単純に読書家の瀬以のために本を集めたのではないでしょう。

「また初めて出会ったときのように瀬以に読み聞かせをしてもらい、二人で楽しく過ごしたい」という夢があったはずです。

そこには全く気が付かない「退屈しないで済みます」の瀬以の言葉には深く傷付いたことでしょう。人の感情や想いを察知する能力に長けている鳥山検校は、鋭すぎてどんどん自分を追い詰めていくように見えます。

そして蔦重と瀬以が不貞関係にあるのではないかという妄想に苛まれ、瀬以を書庫に閉じ込めた挙句に、部下に荷物を調べさせ、持ち物の本がすべて蔦重に関わる本ばかりだったことを知ります。

検校は、瀬川の心の中にいるのは、花嫁道中で大門を出るときに後で威勢のいい掛け声で「青楼美人合姿鏡」の宣伝をしていたあの男、自宅に来たときに「本屋だ」と名乗っていたあの男、つまり不貞の相手は、蔦谷重三郎なのだろうと決め付けます。

厳しい口調で瀬川に「関係があるのだろう」と詰め寄りますが、瀬川はきっぱりと不貞は否定しました。

「いくら金を積まれても、心は売らぬ。そういうことであろう」「お前は骨の髄まで女郎だな」というきつい言葉を瀬川に投げかける鳥山検校。

瀬川を傷付ける言葉を投げかけておきながら、その言葉に鳥山検校自身が傷付いているようにもみえました。

3ページ目 「蔦重はわっちにとって光でありんした。」

 

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