源実朝が感激した動物たちの親子愛。しかし人間は…『金槐和歌集』よりこんな一首を紹介【鎌倉殿の13人】:2ページ目
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さて、鹿之助のお味は?
とまぁそんなことがあって、一方こちらはNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。以下フィクションですが、ちょっと考えさせられるエピソードでした。
日々の鎌倉殿修業に心疲れていた実朝は、御家人の和田義盛(わだ よしもり)に紅葉鍋(鹿肉)を振る舞われました。
聞けば三日三晩も追い回し、仕留めた小鹿は鹿之助(しかのすけ)。義盛が命名したといいます。
名前なんかつけたら情が移って食いづらかろうに……と思ってしまいそうですが、可愛いからこそ美味しくいただく。ちょっとよく解りませんね。
おまけに巴御前(ともえごぜん。一説に義盛の愛妾)が鹿之助の顔真似なんかするものだから、いよいよ食いにくいったらありゃしません。
(あぁ、この鹿之助の母親は、どんな思いだったのだろうか……)
しかし殺されてしまった命は戻りません。そして御馳走を振る舞ってくれた義盛たちの思いも無下には出来ない……かくして実朝は鹿之助をいただきます。
鹿肉は旨い(※筆者の感想)ですが、鹿之助はさぞ複雑な味がしたことでしょう。そんなことを考えさせる一幕でした。
※参考文献:
- 斎藤茂吉 校訂『金槐和歌集』岩波文庫、1929年4月
- 田辺聖子ら『21世紀によむ日本の古典10 小倉百人一首』ポプラ社、2001年4月
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