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どんなに腹が立っても、人を殺すな!北条重時(義時・三男)の説いた鎌倉武士のアンガーマネジメントとは?

どんなに腹が立っても、人を殺すな!北条重時(義時・三男)の説いた鎌倉武士のアンガーマネジメントとは?

人ヲ煞害スヘカラス(人を殺害すべからず)……

一、 時トシテ何□腹立事アリトモ、人ヲ煞害スヘカラス、餘ニ腹立テ、奇恠ニヲホヘハ、人ニアツケテ能ヽ心ヲ静メテ後、所當の罪科ニ行ヘシ、忽ニ事ヲ□ルへカラス、腹ノタツヲシツメヌサキニ、楚忽ニ計□レハ、後悔スル事出クル也、ヤスカラス思事アラハ、目ヲフサキテ能ヽ安スヘシ

※『六波羅殿御家訓』第四条目(原文では特に番号は振られていないが、便宜上)より

【意訳】人間、生きていれば腹の立つこともあるでしょう。しかしどんなに腹が立ったからと言っても、カッとなって人を殺(煞)してはいけません。
どうしても腹が立って我を忘れそうになったら、まずは相手の身柄を人に預けて冷静になった上で、しかるべき刑法を適用しなさい。
決してその場の感情や勢いで判断してはなりません。必ず後悔することが出てきますから。
怒りの衝動に駆られた時は、とにかく目をふさぎなさい。よくよく心を鎮めるのです。

……腹が立ったからと言って「人を殺してはいけません」。こんな当たり前すぎることをあえて言わなければならない辺り、当時の殺伐とした空気感が伝わってきますね。

しかし、ついカッとなって殺したはいいものの、後で相手が無実だったと分かっても取り返しがつきません。

「コイツは違反した悪いヤツだから殺ってしまえ!悪・即・斬だ!」

まぁお待ち下さい。そもそも相手が悪かどうかも、冷静に判断すべきです。だからひとまず何はなくとも、相手の身柄を第三者(しかるべき当局)に引渡し、じっくりと取り調べてもらいましょう。

その上で何の罪に当たるのか、あるいはモラルに反するのかを客観的に判断した上で、その落ち度に見合った処分を下すのです。

「確かにその通りだけど、いざ我を忘れてしまったら、そんなことは出来ないよ」

であるならば、相手を斬ろうと刀に伸ばすつもりの手を自分の両眼にもっていき、自分の視界をふさいでしまいましょう。

競走馬じゃありませんが、急に視界が狭まったりふさがったりすると、不思議と落ち着く(少なくとも、闘争心は大きく削がれる)ものです。

隙を見せたら相手に斬られるんじゃないかと心配なら、ちょっと顔を背けて相手の位置を視界の端に移動させるだけでも違います。

とにかく斬るのは待って下さい。よく「怒りの持続時間(感情のピーク)は6秒」などと言われる通り、深呼吸するなり相手と距離を(物理的に)あけるなどしてやり過ごしましょう。

それが相手はもちろんのこと、何よりあなたの心身を守ってくれることになります。

終わりに

言うは易く行うは難しでしょうが、こういう教訓が頭の片隅にあるだけでも、いざ咄嗟の行動が少しずつ違ってくるもの。

北条重時『六波羅殿御家訓』は全43箇条。現代にも十分に通用する人生の教訓がたくさん詰まっているので、他の教えも改めて紹介したいと思います。

※参考文献:

  • 桃裕行 校訂『北條重時の家訓』養徳社、1947年10月
  • 『増補改訂 武家家訓・遺訓集成』ぺりかん社、2003年8月
 

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