「鎌倉殿の13人」一度戦となれば、一切容赦はしない。第35回放送「苦い盃」振り返り:4ページ目
義時の呷る「苦い盃」
さて、武蔵国で臨戦態勢を整えていた重忠を何とか説得しようと訪ねる義時。謀叛の意思がないことを誓う起請文の提出を勧めますが、それを受け入れる重忠ではありません。
かつて重忠は梶原景時の讒訴によって謀叛を疑われた時、
「起請文とは心に偽りある者が書くもの。この重忠の忠義は今までの行動が何よりの証明であり、誰もがそれを認めるところである(意訳)」
と答弁。誰もがそれを認めて無実を勝ち取ったことがあります。それが今さら起請文など提出したら、それを理由に討たれてしまうことでしょう。
【鎌倉殿の13人】カッコよすぎる!謀叛容疑のピンチをチャンスに変えた畠山重忠の堂々たる答弁がコチラ
「私を招き寄せて、殺すつもりじゃないでしょうね」
疑う重忠の質問に対して、義時は「ハハハ、まさか」と笑って否定しましたが、ここは真剣に答えるべきではなかったでしょうか。
だって義弟が殺されかねない状況でしょう?かつて重忠が謀反の疑いを恥じて武蔵で謹慎していた時、無二の親友であった下河辺行平(しもこうべ ゆきひら)や結城朝光(演:高橋侃)らは必死で重忠を弁護したと言います。
何なら重忠と組んで鎌倉殿と一戦交えかねない勢いだったと言います。しかしこの義時に、その覚悟は見えません。
これまでずっと時政を諫めながら、その非に対してどこまでも食い下がって止めようという気概の見られなかった義時。恐らく正面から父と向き合うことを避けてきたのでしょう。
そんな兄がもどかしかったからこそ、北条時房(演:瀬戸康史)は「これ以上、継母上(りく)に振り回されないで下さい!」と詰め寄ったのだと思います。
これを聞いた時政はヘソを曲げてしまい、義時も「最後のは余計だった」と叱ったものの、やはりいつかどこかで誰かが言わねばならないセリフ。真に「鎌倉のため」を思うのであれば。
父に流され、結局は重忠を討つことになると覚悟した義時の呷った盃は、さぞや苦かったことでしょう。