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鎌倉殿を退屈させるな!『吾妻鏡』が伝える、御家人たちに課せられた新任務とは?

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「鎌倉殿がご退屈あそばされぬよう、おのおの精進せよ」

小侍所番帳更被改之。毎番堪諸事藝能之者一人。必被加之。手跡。弓馬。蹴鞠。管絃。郢曲以下事云々。諸人随其志。可始如此一藝之由被仰下。是於時依可有御要也。陸奥掃部助被相觸此趣於人々云々。

※『吾妻鏡』仁治2年(1241年)12月8日条

時は仁治2年(1241年)12月8日、鎌倉殿の身辺を警護・お世話する小侍所について、そのシフト表(番帳)を更新しました。

「ん、何かあったのか?」

ざわ、ざわ……いぶかしむ御家人たちに、陸奥掃部助(むつかもんのすけ)こと北条実時(ほうじょう さねとき)が説明します。

「みんな静かに。話しを聞いてくれ。今回のシフト変更について驚いた者も多いと思うが、これはチームの中に『一芸に秀でた者』を組み合わせた結果である」

一芸?それが鎌倉殿の警護に何か必要なのか?ますますよく分かりません。

「書道・騎射・蹴鞠・音楽・歌謡など……もし鎌倉殿がご所望の際はすぐに披露いたし、ゆめゆめご退屈あそばされぬように考えたのだ」

何だと、将軍様の退屈しのぎまで我らの仕事に加えようと言うのか……などと面倒がる御家人もいれば、一方で自分の特技をもって査定アップを図ろうと張り切る手合いもいたことでしょう。

しかし書道や歌謡、あるいは蹴鞠のお相手くらいならともかく、もし「今から騎射を見せてくれ」などと言われたら、さぞ準備が大変だったことと思われます。

終わりに

「……今後はこれらの芸道について、各々精進してもらいたい。以上解散!」

古来「芸は身を助く」とはよく言ったもの。かくして小侍所の任務には「鎌倉殿の退屈しのぎ」それに伴う「芸能の稽古」も加えられたということです。

いつの時代も上司のご機嫌とりはとっても大変。頑張る御家人たちの努力エピソードや苦労話も、『吾妻鏡』に載せてくれたらよかったのにと思います。

※参考文献:

  • 五味文彦ら編『現代語訳 吾妻鏡 11将軍と執権』吉川弘文館、2012年1月
  • 元木泰雄 編『日本中世の政治と制度』吉川弘文館、2020年11月
 

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