「鎌倉殿の13人」天が次に望むのは……第25回放送「天が望んだ男」振り返り:4ページ目
頼朝の理解者たる自負
そして義時。橋供養の酒宴から一足先に帰ると立ち去った頼朝を見送った瞬間、
「決してわしから離れるな。わしのためでもあるが、そなたのためでもある」
と言ったセリフを思い出しました。曽我兄弟の襲撃に際して、頼朝が義時に言ったのをご記憶でしょうか。
果たして頼朝が落馬。虫の知らせを表す鈴の音が人々の脳裏に響き渡る中、義時だけは安らかでした(聞こえていなかったようです)。
これは彼を天が望んだという印しなのか、あるいは既に頼朝と「別れの挨拶」を済ませていたからかも知れません。
「人の命は定められたもの。あらがってどうする。甘んじて受け入れようではないか。受け入れたうえで、好きに生きる。神仏にすがっておびえて過ごすなど、時の無駄じゃ」
「それがようございます。鎌倉殿は昔から、私にだけ大事なことを打ち明けてくださいます」
最初のころは、頼朝から何か重要なことを伝えられると迷惑がっていた義時が、今では頼朝からの信頼を誇りに思っていました。これはかつて盟友の三浦義村(演:山本耕史)が言っていた
「……お前は少しずつ、頼朝に似てきているぜ……」
の表れなのではないでしょうか。自分が頼朝にとって最高の理解者である自負をもって、その後も頼家を、ひいては鎌倉を支え続けるのでした。
しかし、頼朝を誰よりも理解していると自負する者がもう一人。鎌倉の留守を託された梶原景時(演:中村獅童)。彼もかつて源義経(演:菅田将暉)に傾倒したように、将軍家の守護者たらんと動きを見せます。
頼朝亡き後、御家人たちがそれぞれの野心や使命感によって衝突していくのですが、今からゾクゾクしますね!
終わりに
時政「これに酢をかけて食うんじゃ。旨いぞ~」
北条家では法事で一族が集まると丸餅を作ってみんなで食べる習慣があったのだとか(出典などは調査中)。
ちなみに、餅と言ったら甘いか塩ょっぱいかのどっちかと思っていましたが、酸っぱい餅って斬新ですね。
当時は醤油や砂糖が普及していなかったとは言え、味噌や塩ならあるわけですし、あえて酢をかけるという食文化があるのでしょうか。
平安・鎌倉期も酢は酸っぱいはずですし、もしかしたら餅の方が特殊な(酢と相性のよい)味だった可能性もありますね(画面を見る限り、特に中身は入っていなかったようですが……)。
それも興味深いのですが、今回は頼朝と北条ファミリーの距離感について。伊豆で政子と結ばれ、時政の婿となった頼朝。しかし餅づくりはいつも欠席だったそうです。
でも、もし一度でも参加して、温かな団欒の中に身を置いたことがあったなら……そう思わずにはいられませんでした。
肉親の縁薄く……かつて全成の占いが、こんなところで当たってしまった頼朝。その死によって鎌倉は大混乱に陥ります。
果たして天は、次に誰を望まれるのか……これからも、目が離せませんね。
※参考文献:
- 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 後編』NHK出版、2022年6月
- 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 続・完全読本』産経新聞出版、2022年5月