モアイが日本の名所に!?モアイ像で有名なイースター島を日本のモノにできるかも知れなかった件:2ページ目
在チリ公使の三宅哲一郎(みやけ てついちろう)は提供された島の資料を外務省に送付。購入の価値があるかどうか、海軍にも意見を求めました。
海軍からは(1)同島について、軍事的な価値はあまり高くない。少なくとも、呈示されている金額に見合わない。(2)しかし、今後空路が発達すれば南米方面への中継・補給基地としては有効と考える。(3)もし購入するのであれば、日本の領土が東へ進出することについてアメリカの反発が予想されるため、あくまで漁業地の名目で取得するのがよかろう……的な意見が出されます。
さて、イースター島を購入すべきか否か……6月30日に三宅公使がアルトゥーロ・アレッサンドリ・パルマ大統領に謁見した時、それとなく探りを入れてみました。
すると、どうやらイギリスやアメリカにも売却を持ちかけていることが判明。どうしたものでしょうか。
恐らく大統領としては「早くしないと、買われてしまいますぞ?」と競合させたかったのでしょうが、三宅公使は良くも悪くも空気を読んでしまう日本人。
「もしも英米が乗り気だった場合、日本が競合するのはよろしくありません。そこまでして購入すべき案件でもありませんし、ここはひとまず静観するのがよろしいでしょう」
……本国の外務大臣・広田弘毅(ひろた こうき)にそう意見を具申すると、広田大臣はこれを受けたのか、その後イースター島の購入には言及しなくなったのでした。
終わりに
こうしてイースター島の購入から手を引いた日本政府。しかしイギリスやアメリカも別にそこまで欲しい訳ではなく、結局どこも買ってくれず、現代に至ります。
(軍艦建造の予算は、どこから捻出したのでしょうか。あるいは断念したのか、そこまでは分かりませんが……)
残念な気もしますが、もしイースター島を購入していたら、程なく勃発した大東亜戦争(太平洋戦争)によって米英に奪われてしまったことでしょう。
また昨今イースター島では、独自の伝統文化や生活を守ろうと現地住民による独立運動が起こっています。こうした先住民問題を抱え込むリスクを考慮すると、やはり購入は見送って正解だったのかも知れませんね。
※参考資料:
- 外務省:外交史料 Q&A 昭和戦前期
- News Up イースター島が日本に? 外交“公”文書が歴史を作る|NHKニュース
- A・コンドラトフ(中山一郎 訳)『イースター島の謎』講談社、現代新書、1977年7月