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まさにリアル戦国無双!朝倉義景に仕えた戦国武将・真柄直隆の豪傑ぶり

まさにリアル戦国無双!朝倉義景に仕えた戦国武将・真柄直隆の豪傑ぶり

匂坂三兄弟との死闘に果てる

……中ニモ真柄ハ、大力ノ剛ノ者ナレハ、五尺三寸ノ大太刀を真向ニサシカザシ、取テ返シ、四方八面ニ切テ廻リケレハ、四五十間四方ハ小田ヲヌキ返シタルカ如クニソ成タリケル、彼ニ渡シ合、追詰追廻シ、数十人切伏、是真柄十郎左衛門尉ト云兵也、志ノ者アラハ、引組テ勝負ハセヌカト云聲ヲ聞テ、是ハ徳川カ郎等匂坂式部ト云者也、参リ合ント云儘ニ、手鑓提渡シ合セ、暫ク戦、草摺ノ外レヲ一鑓撞タリケルヲ不屑、大太刀ヲ以打払ヒ払切ニ切タレハ、匂坂カ甲ノ吹返シヲ打砕キ、余ル太刀ニテ持タル鑓ヲ打落シタルニ、式部カ弟匂坂五郎次郎助来テ、真柄ニ渡合セ戦ケルカ、余リニ強ク撃程ニ、蜻蜒ニ請流ス所ヲ、拝ミ切ニ切テ、匂坂カ太刀ヲハヽキ本ヨリツント切テ落シ、余ル太刀ニテ弓手ノ股ヲナキスヘタル、太刀ノツカ計持テ、既ニアヤウク見エケル所ヲ、匂坂六郎五郎是ヲ見付テ、隙間モナク助来ルニ、郎等ノ山田宗六、我主ヲ討セシトヤ思ケン、太刀ヲ真向ニカザシ進タリ、真柄キツト見テ、心ザシノ奴原、オシクハアレ□、イテ物ミセント云マヽニ、持タル太刀ヲ取ナヲシ、エイヤツト打タレハ、カラ竹割ニ打ワラレテ、弓手妻手ヘワリツケタリ、六郎五郎得タリトテ、十文字ノ鑓ヲ以掛タルニ、真柄イトヾ打物ノ達者ナレハ、暫ハ受流シ戦シカ、遂ニカケ倒レケルニ、最後コソ神妙ナレ、起上リ、今ハ是マテ也、真柄カ首取テ、ヲノコノ名誉ニセヨトソ云タリケル、六郎五郎、式部ニ向テ、始鑓付ラレタル事ナレハ、御辺首取テ大将ノ見参ニ入ヨト云ケルカ、式部フリ仰ヒテ、真柄カ太刀ニテカク甲ヲ砕レ、ウス手少々負タレハ不相叶、汝取テ參ラセヨト辞シケレハ、走懸リ、首ヲ打落シケリ……

※『甫庵信長記』姉川合戦之事、元亀元年六月二十八日

……特に真柄は剛力で五尺三寸の大太刀を振りかざして敵中へとって返し、四方八面に斬り回った。その勢いたるや織田・徳川の軍勢に四五十間(約70~90メートル)四方の穴があいたようである。

数十人を斬り伏せたのは真柄十郎左衛門尉という豪傑。死にたいヤツからかかって来い、との挑発を受けて挑みかかったのは、徳川家の郎党・匂坂式部(さぎさか しきぶ。名不詳)。

しばし白刃を交える内、式部の槍が真柄の草摺(くさずり。大腿部を保護する鎧の部品)を突いたが手ごたえなく、その隙に真柄は大太刀で式部の吹き返し(兜の部品で側頭部の衝撃を吸収する)を砕き、返す刀で槍を叩き落とします。

最早これまで……覚悟した式部の向こうから、その弟の匂坂五郎次郎(ごろうじろう)が駆けつけました。

五郎次郎「兄上、ご無事か!おのれ真柄、今度はそれがしが相手ぞ!」

真柄「青二才め、引っ込んでおれ!」

敢然と立ち向かった五郎次郎ですが、真柄の太刀筋があまりに重く、五郎次郎の刀は鈨(はばき)を残して根元からズンと叩き折られてしまいます。

返す刀で弓手(ゆんで。左手)を根元から薙ぎ払ったため、恐らく五郎次郎は左腕を吹っ飛ばされたのでしょう。

「兄上がたーっ!」

式部と五郎次郎のピンチを発見した二人の弟である匂坂六郎五郎(ろくろうごろう)が駆けつけたところ、匂坂家の郎党である山田宗六(やまだ そうろく)は主人を討たせじと進み出ます。

宗六「六郎五郎様、ここは拙者が!」

真柄「このわしに挑む心意気だけは買ってやる。惜しい人材だが……出物にしてくりょうぞ!」

出物(いでもの。ここでは面白い見世物ほどの意)を披露してやろうと豪語する真柄に敢然と突き進む山田宗六、果たして一太刀で唐竹割りの真っ二つにされてしまいました。

六郎五郎「……得たり(今がチャンス)!」

宗六を討ち取った真柄に隙が出来たことを見抜いた六郎五郎は、十文字槍をしごいて挑みかかり、ついに真柄を落馬せしめたのです。

六郎五郎「いざ、神妙に致せ!」

真柄「……うむ」

起き上がった真柄は潔く「今はこれまで。我が首級をとって男児(をのこ)が誉とせよ」と観念します。

六郎五郎「では兄上。初めに槍をつけられたのは式部兄上なれば、真柄が首級を御大将にご披露下され!」

越前にその人ありと武名を轟かせた豪傑・真柄十郎左衛門尉に勝利した!その喜びを隠せない六郎五郎は首級を式部に譲りますが、負傷しているため刀がとれません。

そこで六郎五郎が抜刀し、真柄の首級を叩き落としたということです。

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