明治維新の元勲・西郷隆盛の肖像画を描いたキヨッソーネ、実は西郷の顔を知らなかった!?:2ページ目
キヨッソーネが描いた「お札の顔」たち
キヨッソーネは西郷隆盛の他にも、紙幣のために顔を知らない人物の肖像画を手がけています。
例えば神功皇后(じんぐうこうごう)や武内宿禰(たけうちの すくね)、藤原鎌足(ふじわらの かまたり)に和気清麻呂(わけの きよまろ)と言った古代の偉人たちは、写真はもちろん肖像画も想像でしかない(少なくとも裏づけに乏しい)ため、それぞれモデルを決めて描いたそうです。
【キヨッソーネが手がけた紙幣の顔】
- 神功皇后(1円、5円、10円紙幣)……印刷部の女性職員
- 武内宿祢(1円、5円、200円紙幣)……印刷部長の佐田清次(さた せいじ)
- 藤原鎌足(20円、100円、200円紙幣)……松方正義(まつかた まさよし。当時大蔵官僚)
- 和気清麻呂(10円紙幣)……木戸孝允(きど たかよし。維新の元勲)
……など。基本的に大蔵省の内輪で賄ったようですが、印刷部長と印刷部女性職員って、何だか一定の力関係が働いていそうな気がします。
(※いや、きっと彼女こそ神功皇后のイメージに相応しい顔立ちだったのでしょう。きっとそうです)
でも、違う名前であっても、自分の顔が紙幣のモデルになっているなんて、さぞや鼻高々だったのか、それとも同僚女性から妬みの的にされたのか、想像が尽きませんね。
もしもこれらの紙幣を見る機会があったら、彼らに思いを馳せてみるのも楽しいでしょう。
終わりに
少し話がそれましたが、キヨッソーネは明治31年(1898年)に東京麹町の自宅で亡くなり、今は港区の青山霊園に眠っています。
♪薩摩西郷さんは 世界の偉人
お国の為なら オハラー 死ぬると言うた……♪
※民謡「鹿児島おはら節」より
これまで「ヒゲがない(≒偽造しやすい)」事から紙幣の顔に選ばれなかった渋沢栄一(しぶさわ えいいち)が、造幣技術の向上によって新紙幣の顔になるということで、これは西郷どんにもお札の顔になるチャンス?が巡って来るかも知れませんね。
※こちらもどうぞ
そんな理由で?日本実業界の父・渋沢栄一が今まで紙幣の顔に選ばれなかったのは、アレがなかったから
※参考文献:
石原幸一郎『日本紙幣収集事典』原点社、2005年5月
印刷局朝陽会ら編『お雇い外国人 キヨッソーネ研究』中央公論美術出版、1999年6月
樺山愛輔『伝記叢書44 父、樺山資紀 伝記・樺山資紀』大空社、1988年6月