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元祖かかあ天下!飛鳥時代、絶体絶命の窮地を切り抜けた豪族の妻【下】

元祖かかあ天下!飛鳥時代、絶体絶命の窮地を切り抜けた豪族の妻【下】:2ページ目

活路は死中にこそ求むべし……起死回生の突撃で勝利を掴む

「……大丈夫、必ず勝てます。だってあなたは、私が愛するただ一人のあなたなのだから……ね、そうでしょう?」

いっときの優劣は時の運……しかし途中で何があろうと、最後まで立って笑うヤツこそ勝者……そうとも。これまで何度となく修羅場に見舞われてきたが、この妻に又会いたくて、すべて生き抜いて来たじゃないか。

(……よく考えてみれば、敵よりも妻の方が百倍は怖い!

もうすぐ夜が明ける。酒の酔いも手伝って、奮い立った形名は妻の差し出した愛刀を佩(は)き、愛馬に跨るや鞭声も颯爽と、兵士たちに号令を下します。

「これより敵中を突破し、援軍と合流する……者ども、続け!」

「「「おおぅ……っ!」」」

活路は死中にこそ求むべし……女子供は妻に任せて砦へ残し、少数精鋭で臨んだ形名らは緩んだ包囲の隙を衝いて蝦夷の軍勢を突破。すると、旭日の向こうから朝廷の援軍がやって来るのが見えました。

「味方だ……俺たち、助かったぞ!」

「これで勝てる……者ども、今こそ仲間の雪辱を果たす時ぞ……かかれ!」

かくして完全に形勢は逆転。形名らはみごと蝦夷の軍勢を討ち平らげて朝廷に服属を誓わせ、しばし東国に平安をもたらしたのでした。

「やれば出来るじゃない!」

その功績は、敵より怖い?妻がいたからこそと言えるでしょう。

「上州名物 何かと問えば かかあ天下に カラっ風」

強い女が、男を上げる……そんな県民性は、上毛野(かみつけぬ)が上野(かみつけの)国、そして群馬県となった現代にまで受け継がれているようです。

【完】

※参考文献:
宇治谷孟『全現代語訳 日本書紀(下)』講談社学術文庫、1988年8月
田中良之『古墳時代親族構造の研究』柏書房、1995年5月

 

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