江戸出版界の風雲児!2025年NHK大河ドラマ『べらぼう』の主人公・蔦屋重三郎は流行の仕掛人だった!:2ページ目
娯楽要素が強い「地本」の力
書物問屋は上方で出版された本(下り本といいます)を売り捌く傍ら、江戸で専門書や学術書を出版しており、版元としての顔も持っていました。
そんな「お堅い」内容の出版物を扱う書物問屋は書物屋とも呼ばれましたが、その代表格といえば須原屋茂兵衛でしょう。須原屋は当時のロングセラーだった大名や旗本の名鑑である武鑑をほぼ独占していました。
ところが、江戸が百万都市となった江戸中期に入ると、需要の拡大が追い風となって江戸の出版業は急成長を遂げます。そしてついには、上方での出版点数を凌駕するまでになりました。
この急成長を牽引したのは草双紙(絵入りの娯楽読み物)、浄瑠璃本、絵本、あるいは浮世絵など一枚刷りの出版物の増加ですが、これらは江戸生まれの出版物、つまり地物という意味で「地本」と呼ばれるようになります。
そんな地本を取り扱った問屋は地本間屋(地本屋)と呼ばれ、書物問屋と同じく版元としての顔も持っていました。
書物問屋と比べると大衆的な出版物を扱う地本問屋で代表的なものとしては、鶴屋喜右衛門が挙げられます。元を正せば京都の鶴屋の出店である書物問屋でしたが、後に独立して江戸有数の地本問屋としての顔も持つようになりました。