空飛ぶ勇姿を見たかった…幻の日本海軍機・仮称H式艦上戦闘機はいかに開発されたのか【日本航空史】:2ページ目
浮揚能力を重視しすぎた結果
「しかし、これは……」
仮称H式艦上戦闘機を見た愛知航空機の人々は、いささか面食らったようです。
なんと言うか、子持ちシシャモのようにずんぐりむっくりした機体は、確かに水に浮きそうではありました。
しかし艦上戦闘機ですから、機体重量や運動性能についても疎かにはできません。
試しに飛ばしてみると、やはりノーズヘビー、つまり前部が重すぎて取り回しが難しい状態でした。何なら全体的に重いから動きも鈍めです。
「いやいや、こんなんじゃ飛び立つなり撃ち落とされちまうよ。何とかならんか」
「この状態からですか?一からやり直せって言うならともかく……」
「せっかく作ってもらったのだから、全否定ってのも失礼だろう。そもそも一からやり直すほどの予算も日程もないのだ」
それではまぁやってみましょう。でもあまり期待しないでくださいよ?……と言ったかどうか、愛知航空機の三木鉄夫(みき てつお)技師はH式艦上戦闘機の改良に着手しました。
が、やはり元の形状が形状なので、大した改善を見ないまま納入することになります。
まぁ案の定と申しましょうか、結局H式艦上戦闘機は不採用となってしまったのでした。